2024年12月19日(木)

家電口論

2016年8月7日

 科学の分野で常識というモノがあります。例えば、可聴領域は、20〜20kHzとかです。多くの場合、それは正しい。しかし、より良いモノを作ろうとした場合は、一番面倒臭いハードルだったりします。今回は、視力の限界と日本人が作ったパーソナルユースのプラネタリウムの話です。

人間の肉眼では6等星までしか見ることが出来ない!

 小学校の理科の授業を思い出してください。ここで天文学の基礎知識を学びます。月から始まり、星座、そして宇宙開発。その時、星の「等星」を教えられましたよね。一番明るいのが一等星。で、一番暗いのが六等星です。これは、理科の授業が、肉眼を中心に構成されているためです。

 実際の星は無数にあります。天体望遠鏡なら見える星が実に多いのです。では、夜空を再現するプラネタリウムは、どうか? プラネタリウムを見る時は、当然肉眼ですので、六等星までを並べておけば良いのでは? となります。が、そんなもの知るか、というプラネタリウムを作った人がいます。プラネタリウム・クリエーター大平貴之氏です。

 今回、IDC 大塚家具が、彼の作った初めてのプライベート プラネタリウム「Class」(以下クラス)をベッドにころがって眺めるという粋な企画を立てました。プライベートですから、寝室の天井に写しだすわけです。間近で、無限の星が体験できるということで、出かけて行きました。

 そして私は手に触れるような感じの宇宙を体感し、世間一般でいう常識とは、「その時最も違和感が少ない説明」でしかないことを久しぶりに思い出しました。

リアル天の川

 大平氏が作ったクラスは、円筒形。サイズは卓上に置いて使う空気清浄機、または加湿機ぐらいですので、大きくはありません。しかし100万個以上の星を点描します。円筒形の先にあるフィッシュアイ(魚眼)レンズが、半円球に像を出し、それが壁、天井に映り込みます。焦点は7mまで、それ以上だと星が歪んだりします。

フィッシュアイ(魚眼)レンズ

 やはり強烈なのは、普段見ることはない天の川。天の川は、薄暗い星が、そのエリアに充ち満ちているため、全体的にボーッと煙ったように見えるのですが、高地など空気がきれいになればなるほど、天の川の中に星を認めることができ、天の川も星なんだと思います。その天の川を点描してしまうのです。普通なら、点ではなく面で描写します。「だって見えないんだもーん。」だからですね。

 それを許さないこだわり。ゆっくり見ていると、宙(そら)ってこんなにも豊かなんだと思います。いろいろな驚きに、神秘に満ちている。天井を見ながら、そう感じました。本物が持つリアリティです。本物に妥協はありません。ちなみに終わった瞬間、隣の人は「あ〜ァ」。夢が醒め、現実に戻った瞬間です。


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