2024年12月22日(日)

前向きに読み解く経済の裏側

2016年9月5日

 イタリアというと、「ローマ帝国の歴史は素晴らしいが、今の経済は低迷している」、というイメージが強いのですが、なんと2014年の一人当たり名目GDPは、日本とほとんど同じなのです。

 夏のバカンスを充分楽しみ、それ以外の時も「難しい顔をせずに」働いているイタリア人と、いつでも難しい顔で働いている日本人の年間GDPが同じだなんて、兎小屋に住むワーカホリック(日本のサラリーマンを指す昔の流行語。狭い家に住む働き中毒という意味)には、到底受け入れ難い統計です。

 しかし実際には、日本人とイタリア人の豊かさは異なりますので、過度に悲観する必要はありません。今回は、日本とイタリアの経済の差について、考えてみましょう。

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日本人はイタリア人より豊かに暮らしている

 はじめに、現在の日本人はイタリア人よりも豊かに暮らしているので、カリカリしなくても大丈夫、という話をしましょう。第一に、為替レートの話、第二に、品質の比較の話です。

 2014年は、円安ユーロ高でした。その時の為替レートで換算すると日本とイタリアの一人当たり名目GDPが同じだったという事は、その後に円高ユーロ安が進んでいることを考えると、今の為替レートで換算すると、一人当たり名目GDPは日本の方が遥かに大きい、という事になります。このように、為替レートが動くと「一人当たり名目GDPの国際比較」が大きく変化するので、注意が必要なのですが、そのあたりの話は別の機会に譲りましょう。

 いまひとつ、「日本人とイタリア人が同じものを使っている」という場合に、品質をどう比較するのか、という問題があります。たとえば日本の電車は非常に正確に動いています。5分遅れると社内放送でお詫びが流れます。そんな国はどこにも無いでしょう。少なくとも、イタリアは絶対に違います。その違いを無視して、「イタリアでも日本でも一人の乗客を100キロメートル運んでいるから同じGDPだ」といった計算をする事が問題なのです。豊かさという点では、電車が定時運行している国の方が豊かでしょう。その分がGDPの計算には織り込まれていないのです。


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