富士ゼロックスは東日本大震災で被災した経験から、全社横断の「BCP課題検討会」を定期的に開催。同社のBCPの基本方針では「従業員の生命と安否確認」が最優先だ。「顧客へのサービスの提供も自社の社員の安全が確保されていなければ実現できない。熊本地震の際も、従業員の生活基盤の見通しが立つまで約2カ月間、避難対応も含めた物的・人的支援に取り組んだ。社員の生活再建を支援することは事業継続を目指すうえで不可欠で、企業としての付加価値にもなる」(総務部リスクマネジメントグループの杉森祐司氏)。
社員の生活再建のための取り組みをさらに深化させているのが自動車部品メーカーのジェイテクトだ。全社員の自宅の立地や築年数などから危険度や被災リスクを診断した「個人・家庭減災カルテ」の作成を今年から始めた。地震発災時の危険性を社員に把握させることで危機管理意識の向上に取り組む。これには「内閣府のハザードマップを利用した被災シミュレーションシステムを導入しており、特に危険だとされる地域には個別にアナウンスもしている」(防災推進室室長の岩場正氏)。
また、地震などで被災した場合のために罹災証明書の発行手続きや自治体の費用補助・税金控除などの教育用冊子も配布。本来、生活の再建は各地方自治体の役割でもあるが、「自治体も被災すると行政事務は滞る。また、各家庭の住宅情報までは把握しづらい。社員の生活再建を会社が支援することがひいては事業継続につながると考えている」(岩場氏)。
想定外の災害などで自治体が機能しなくなったときに企業が生活再建の拠り所となり得る体制があれば、なお一層心強い。
[訂正]Wedge11月号25頁1段目「野村総合研究所上級コンサルタントの浅野憲周氏」は正しくは「野村総合研究所上席コンサルタントの浅野憲周氏」でした。お詫びして訂正致します。
■特集「BCP」で商機を逃すな
・Part1 想定外に威力を発揮する「供給網の見える化」
・Part2 中小企業は広域連携で一石二鳥
・Part3 BCPは成長への投資 危機管理で新たな価値創造を
・Part4 社員の生活再建なくして事業継続なし
・Part5 被災した中傷自治体は住民を助けられるか?
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