海外出張社員の安否確認ツールの導入や、社員の自宅の被災リスク診断――。危機管理に強い先進企業は、社員の生活再建について予め対策を打っておくことで、事業継続計画(BCP)を実効性のあるものにしている。
サプライチェーンを途切れさせない─。そうした事業継続計画(BCP)も、最初の一歩は社員の安全確保だ。すべては従業員の生活が保障されてからの話であり、生活再建がままならない状況では、事業継続は実現できない。「社員の安否確認ツールを形式的に導入する企業も増えてきているが、海外出張社員の安全確保や被災した社員の生活再建の支援まで踏み込んで取り組めている企業は少ないのが現実だ」と、野村総合研究所上席コンサルタントの浅野憲周氏は指摘する。
企業がグローバル化すればするほど海外出張社員は増えてくるが、有事の際の安否確認は難しい。売上高の6割以上・従業員の約7割が海外であるオムロン。同社は、旅券情報から出張社員が「今どこにいるか」を地図上で把握できるITシステム「トラベルトラッカー」(インターナショナルSOSジャパン提供)を導入している。社員がどこの空港にチェックインしたかという情報までリアルタイムで分かる。「グローバルでは年間約1万5000件の出張がある中、海外リスクが増えてきていることを受け、社員の安否確認には注力している」(グローバル総務部の櫛田昌徳氏)。バングラデシュやフランスのテロの際も、出張者の所在が即座に把握でき、メールや電話によって安否も確認できたという。セキュリティ対策を現地任せにするのではなく、本社が責任を負う体制を作っている。