年の瀬も押し迫った今月20日、中日・落合博満氏が来年1月でGM(ゼネラルマネージャー)の職から退くことが発表された。顧問や相談役の肩書で球団に籍を残すこともなく、今後は完全に「名簿から消える」(佐々木崇夫球団社長)。事実上の解任だ。
落合GMは2013年のシーズンオフに就任した直後、選手たちに契約更改で大幅減俸を突きつけ、約8億円のコストカットを断行。翌年以降も和田一浩、小笠原道大、山本昌広ら名球会入りした功労者をはじめ20人近くに引退勧告や戦力外通告を行っている。
だが、落合GMが大鉈を振るえば振るうほどかえってチームは低迷し、14年が4位、15年が5位、今年は19年ぶりの最下位。とくに、自ら陣頭指揮を取り、大学生、社会人、独立リーグ出身と年齢層の高い即戦力ばかりを獲り続けながら、まるで役に立っていないドラフト戦略は、落合GMの最大の失政と指摘されている。地元ファンも愛想を尽かして、ナゴヤドームのスタンドには「落合、出て行け」という横断幕まで見られるようになった。名選手、名監督たり得た落合氏も、名GMにはなれなかったということである。
GM不要論
落合GMの失敗は今後、球界に少なからぬ影響を与えるような気がする。恐らく、今後はほとんどの球団が「GM不要論」に傾くのではないだろうか。
アメリカのメジャーリーグでは通常、どの球団にもGMがいる。チーム編成の最高責任者として戦力補強するのがGMの仕事、その戦力をグラウンドの最高責任者として試合で使うのが監督の仕事だ。両者がきちんとそれぞれの立場をわきまえ、それぞれの役目と職責をまっとうしてこそ、バランスの取れたチーム運営が可能になる。日本でもこのシステムを導入しようと、昔からいろいろな球団が様々な人材をGMに登用してきたが、いまだに球界全体に定着するまでに至っていない。
現に、落合GMを解任した中日も当面はGMを置かず、森繁和監督の方針やコネクションによって補強を進めていくという。「日本ではどうしても、監督や親会社の顔色をうかがいながらチームづくりをするしかない。大変なお金も動くしね。GMとして自分の計画を主張し、実行するには、よほどの度胸と才覚のある人物でないと」と、ある中日関係者は苦笑した。落合氏こそはその希有な度胸と才覚の持ち主だったはずが、とんだ見込み違いだったわけだ。