コメ輸出で利益が出ない原因
輸出で農家が利益を出すのを難しくしている原因は、生産コストの高さ以外にもいくつかある。まず挙げられるのが関わる業者の多さと、それに連動して中間マージンがかさんでしまうことだ。
国内集荷業者、国内の輸出会社、海外の輸入会社、現地の卸売りと、末端の小売りに行きつくまでに相当の中間マージンを取られる。国内の2倍近い価格で売れると聞いて輸出をしたところ、末端価格は確かに国内の倍だったが、間で抜かれて農家の手取りは通常よりも低かったといった話は産地でよく聞かれることだ。
加えて、現地での国内他産地との価格競争が過熱していることも挙げられる。輸出の過半を占めるのが香港とシンガポールへの輸出で、現地のデパートや高級スーパーでは国産米同士が熾烈な棚争いを繰り広げる状況に陥っている。
さらに足を引っ張る存在が飼料用米だ。実際の販売価格は主食用米に遠く及ばないが、多額の補助金が付き主食用と同等の収入が確保できるうえ、栽培に手間がかからない。
茨城の輸出でも「飼料用米の方が若干高く、輸出をやらない人はやらない」(染野さん)と、飼料用米が足を引っ張る最大の要因になっている。
目先の利益だけを考えれば、輸出は経営上の選択肢にはならないかもしれない。それでも18年の減反廃止と国内のコメ需要の縮小を考え、将来を俯瞰する農家にとっては、輸出は有望な選択肢の一つになっている。
▲「WEDGE Infinity」の新着記事などをお届けしています。