2024年11月24日(日)

Wedge REPORT

2017年2月9日

1社で国内輸出量の1割新潟農商

 15年の実績で全国のコメ輸出量の8%、16年は10%超を占める勢いなのが、新潟市の新潟農商。新潟クボタのグループ会社でコメの集荷・販売などを手掛ける同社は、海外のクボタグループの会社にコメを輸出し、現地会社から小売りに販売することで、中間マージンを最小化している。

 新潟県内の450軒もの農家が輸出に加わり、16年産で1983・4トンの輸出を見込む。輸出先はクボタグループが現地会社を立ち上げた香港、シンガポールのほか、新潟農商が独自に販路を開拓したモンゴル、この冬からはベトナム、ハワイにも販路を拡大。順調に販路を切り拓いている同社だが、社長の伊藤公博さん(59)は、「輸出はパラダイスではない」ときっぱり。

 農家との契約時に提示する価格は、農家にとって利益を確保できるぎりぎりの価格。同社自身も輸出による利益は少なく、国内向け販売でしっかり利益を出す分、輸出もできているという状況だ。

 それでも、「将来に向けて自分たちの販路を確保しておかなければと危機感を持っている農家が多い。農家からの期待が大きいので、売り先をもっと広げようとしている」と伊藤さんはあくまで攻めの姿勢だ。

ウランバートルのスーパーではおにぎりを配っての販促活動もしている(NIIGATANOSHO)

 農業法人荒神(こうじん)の寺澤和也さん(64)はそんな農家の一人。4年前から新潟農商を介した輸出を始め、今ではコメの作付面積40ヘクタールのうち1割超えの4ヘクタール強を輸出用に充てている。

「稲作農家はこれまで保護されてきただけに、周りが見えない。これだけ作ればこの額で買ってくれるという考えでずっとやってきたところがある。それではいけない」と寺澤さん。

 念頭にあるのは18年の減反政策廃止と国内の需要減。18年以降、今ある各種補助金が継続するか期待できない中、輸出に舵を切る方が得策だと考えている。今後、輸出用の割合を2割程度まで高めるつもりだ。

 新潟と言えばコシヒカリだが、新潟農商では業務用に適した多収品種の輸出も手掛けている。

 生産コストの削減にも熱心で、1俵の生産費(農機具代を除く)を6000円以下にするプロジェクトに取り組んでいる。農機具代を除いた生産費の全国平均は1俵約1万2000円で、実現すれば驚異的な額だ。その実現のために「いただき」という反収が12・5~13俵もある品種の直播栽培に取り組んでいる。

 輸出についての問い合わせの中には、価格を聞いて、国内の米価が下がったら輸出に加わると話す農家も多いという。

 「でもね、後出しじゃんけんはだめなんです」と伊藤さん。

 「輸出には、受け入れ側の限界量というものがある。その量まで誰が早くコメを持っていくか。スピード感を大事にしながら、将来的に1万トンほど輸出したいと思っている」


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