前向きに読み解く経済の裏側

2017年2月13日

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塚崎公義 (つかさき きみよし)

経済評論家

1981年 東京大学法学部卒、日本興業銀行(現みずほ銀行)入行。主に経済調査関連の業務に従事。2005年 銀行を退職して久留米大学へ。現職は久留米大学商学部教授であるが、当サイトへの寄稿は一個人として行うものであるため、肩書きは「経済評論家」とする。

それでも経常収支黒字は素晴らしい

 経済学的には、経常収支の黒字、赤字は善悪ではありませんが、日本経済の現状を考えると、やはり経常収支の黒字は素晴らしいと言えるでしょう。第一は、少子高齢化が進みつつあることです。もしかすると将来の日本は、「現役世代が皆で高齢者の介護をしているので、製造業で働ける人がいない」国になってしまうかもしれません。そうなれば、輸出が激減し、輸入が激増します。その時に、日本が輸入する外貨を持っていなかったら大変です。現在、日本が経常収支黒字で外国から稼いでいる外貨は、対外純資産の増加となって外国に貸し出されていますから、将来はそれを取り崩して輸入することができるわけです。「日本国が老後に備えて貯金している」というわけですね。

 今ひとつは、日本政府の借金です(本稿では、日本銀行の借金も併せて政府の借金と考えることにします)。日本政府は、財政赤字が巨額で、借金額も巨額なので、日本政府が破産するかもしれないと思っている人は少なくありません。そうした時に、日本政府が借金をできるのは、日本人から借りているからです。

 経常収支の赤字が続くと、対外純資産がマイナスになり、日本全体として外国から借金することになりますから、日本政府も外国人から借金せざるを得ませんが、外国人から借金をしようと思うと、高い金利を払う必要が出てくるでしょう。破産するかもしれない政府に喜んで金を貸してくれる外国人投資家は少ないからです。

 しかし、日本人ならば、安い金利で貸してくれます。日本人投資家は、「日本政府に貸すと、日本政府が破産するかもしれない」という心配と、「外国に投資すると、ドルが値下がりして損をするかもしれない」という心配を比べて、日本政府に貸す方がマシだと考えるからです。ちなみに、日本政府に貸さず、ドルも買わないという選択肢としては、日本の銀行に預金することなどが思いつきますが、日本政府が破産する時には日本の銀行も破産するでしょうから、選択肢としては余り魅力的とは言えないでしょう。

 経常収支が黒字になった原因も重要です。ひとつは、原油価格です。原油価格が高いということは、アラブの王様に税金をかけられているようなものですから、原油が安くなったことで経常収支黒字が増えたのであれば、それは素晴らしいことです。

 今ひとつは、失業率です。日本製品が海外で売れず、日本企業が物を作らなくなって、日本人が失業してしまうと同時に経常収支が赤字になってしまうのは困ります。しかし、今は輸出もそこそこ行えていて、日本人の失業者は従来より少なくなっています。これも、素晴らしいことだと言えるでしょう。

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