2024年11月22日(金)

東大教授 浜野保樹のメディア対談録

2010年5月14日

石原 中国にポケモンを持っていくということは、何度も挑戦してきました。残念ながら利益が出るところまではいっていません。でも、日本アニメの上映が難しい状況下で、ポケモンの映画だけは、去年も中国で上映できました。

ディズニーのブランド戦略は厳しい

浜野 つくづく思いますが、石原さんの口ぶりからして、ひとつひとつのプロダクトに目が行き届いているなと思います。飛行機の横腹に、ポケモンの「ピカチュウ」の絵が描かれていた時、それを見て思いました。この絵自体、きちんと誰かによって監修を受けながら、描かれたものなんだなってことをね。

 また伺いますが、ああしたひとつひとつの気配り目配りと、商品の品質維持、ひいてはブランド価値の保全ですね。そこは石原さん、最終的にご自身で関与するんですか。


石原 さきほど、ディズニーをどれくらい意識しているかと聞かれて、まったくないと答えましたが、思えばブランド価値を守ろうとするところ、品質維持の手法は、ディズニーに学ぶことは多いと思います。

 ディズニーの品質コントロールは、聞きしに勝る厳しさですし、ライセンスを与える先を決めるときは、その会社の経営状況を精査したり、物を作っている工場の清潔さなど全部、査察するという話を聞いたこともあります。

 そのうえで、描かれるキャラクターの大きさ、頭や体の比例配分、色使いの正しさなどを、とても厳密にチェックしながら、維持してる。

 こういうこだわりの強さは、見習うところは多いような気もしますね。

 ただ、ポケモンは架空とはいえ、生き物なので、生き物には個体差があるわけです。耳がちょっと長いピカチュウがいたり、尻尾の様子が少しほかと違うピカチュウがいても、それは「あり」なんです。それぞれの生き物が、種別の認識ができる限り、そこでのバリエーションは認めていますし、あって当然の個体差を、商品の面白さ、可愛さにうまく表現できているものだとすると、それは喜んで受け入れたりしています。

司会 キャラクタービジネスの常道からすると…

石原 少々、横紙破りかもしれません。どこまでが「あり」なのか、どういう商品カテゴリーならあってよいのか、蓄積してきた経験則がありますから、それを元に、キャラクターを使いたいと言ってきたところとライセンスの担当者が、長い打ち合わせをやりますね。これがまず第一段階です。

 第2段階は毎週開く版権会議で、とても長い時間をこれにかけています。

愛らしいポケモン「ピカチュウ」

 例えばマグカップにピカチュウの絵を載せた商品が、承認を得たいと持ち込まれたとしますよね。そのとき僕ら、ここにピカチュウがいないといけない必然性について、問いを立てます。

 「みんなが目を向けて、欲しいと思ってくれる。それだけじゃダメなのか」と、当然思うでしょうね。

 でもそれだと、「あ、それじゃピカチュウは、客寄せに消費されるだけの存在なんですね」ということになるので、「それよりも、もう少し生産的な使い方はないでしょうか」と、さらに問うていきます。

 例えばピカチュウは、電気タイプのポケモンなんです。あくまでも例ですが、もしもその商品が、こすると静電気をいっぱい出すようなものだったとすると、ピカチュウが持っている性質に何となく合っているでしょう。

(C)2010 Pokémon. (C)1995-2010 Nintendo/Creatures Inc./GAME FREAK inc.


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