ただ単にお皿に絵が描いてあるというのとは違います。キャラクターがそこでそれ自身の生命を持っているわけですからね。そういうものを世の中に出して欲しいんです、僕らは。
言い方を変えると、「ピカチュウにしなくてはいけない、ピカチュウでなくてはどうしてもいけないという理由を、ご一緒に探しませんか」と問いかけ、持ちかけているわけですね。
面倒でうるさいな、と思われることもありますけれど(笑)。
浜野 海外のライセンス案件の場合、そこはどうするんですか。
石原 アメリカの案件は、シアトルにポケモンカンパニー・インターナショナルという会社がありまして、そこで一手に担っています。ヨーロッパだったら、イギリスのロンドンに拠点があり、株式会社ポケモンもそこに加わることがあります。
版権ビジネスとは夢への共同参画
僕の興味は、ピカチュウをこう使ったらもっと面白くなるっていう、ポケモンの世界を膨らませてくれるようなアイデアにあるんですね。いい意味で、ポケモンの固定観念を壊してくれて、それがポケモンの世界を豊かにしてくれるようなものなら、大歓迎です。
といいますのも、キャラクター・ビジネスというのは、ライセンスを与える、授権する仕事でしょう。やっているうちに、必ずキャラクターの性格を薄めていく方向に流れるし、さればといって統一性ばかり重んじていると、今度はキャラクターがガチガチに固まった、生命感のないものになったりしがちなんです。
司会 つまり使わせてくれ、と言ってやってくる人たちと、石原さんたちとが、その都度新しいポケモンの夢、ポケモンの世界を、一緒に作ろうとするわけですね。ポケモンの新たなビジョンを共同して作るというか。
石原 ですから「ライセンスを与える」仕事とは思っていません。版権ビジネスっていうのは、キャラクターをより面白くするためのプロデュースの仕事だと思っています。
司会 夢への共同参画である、と。
石原 ええ。
黒澤明、山田洋二を絶賛――続けることの難しさ
浜野 うんやっぱり、今日は石原さんのような方が稀有だってことを、改めて確認できました。そもそもの初発から、いわばポケモンが生まれるその前から関わってらして、ひとつひとつの発展に、すべて全人的に関与してこられた。
その関与のしかたそれ自身が、ポケモンとはかくあるべし、かくあるものなり、という、石原さんがよく使う言葉で言うと「世界観」の表明になってる。ここにいる株式会社ポケモンの社員はもとより、ヨーロッパやアメリカにまで、その世界観が広まっている。
1990年代半ばからの日本っていうと、ひたすら停滞して、萎れていただけのように思い勝ちですが、このようにして世界的キャラクターを生み出し、育ててきた事実はもっともっと、知られてしかるべきですね。
それにこれだけ長く続けるということは、それ自体が大変なこと。ホラ、例えば「男はつらいよ」。山田洋二監督の。
あの作品、やれマンネリだの、ワンパターンだの、当時さんざんに酷評されたものです。しかし黙って映画館に行く人たちの間には圧倒的支持があったし、ファンは、渥美清が死んでだいぶ経つ今だって増え続けている。