2024年11月22日(金)

シリーズ「東芝メモリを買ってほしいところ、買ってほしくないところ」

2017年4月13日

第7回 東芝メモリをウエスタンデジタルが買収すべきでない理由

 東芝とNANDを共同開発、製造しているWD、SK Hynix、マイクロンなどが買収候補になっているが、独禁法に抵触する可能性があるため、その審査が長引く。また、これらの企業には2兆円の資金が出せるかどうか疑問である。また、同じNANDと言っても企業ごとにつくり方は違う。したがって、競合他社が買収すると、無用な混乱を招く。日立とNECが合併したエルピーダ、日立と三菱とNECが統合されたルネサスが凋落したのは、そのせいである。

第8回 東芝メモリの売却価格、2兆円では安すぎる

 ここ数年の半導体企業のM&Aと比較してみると、東芝メモリの買収価格が2兆円というのは安すぎる。なぜ安値になっているかというと、まず、すぐにキャッシュが欲しい東芝が足元を見られているからだ。また、ここ6年ほどの東芝のNANDの売上高がほとんど成長していないことも安値の原因となっている。しかし、オールフラッシュサーバーの急速な普及を考えると、8兆円くらいで売却してもいいと考えられる。

第9回 産業革新機構による東芝メモリの買収は合法か?

 政策銀と革新機構は、「新株の1/3を握れば重要事件の決定に拒否権を発動できる」から応札すると言っている。しかし、メモリビジネスの本質は、巨額な設備投資を、いつ、どこで行うか、という果断な決断をすることである。つまり、メモリビジネスとは、一種のバクチなのだ。ところが、「拒否権を発動するため」だけに、ボードメンバーに革新機構や政策銀から送り込まれた厚顔無恥な輩は、目の前に到来しているチャンスを「拒否権を発動して」全てを台無しにしてしまうだろう。彼らには引っ込んでいてほしい。

第10回 買収して欲しい企業はどこか?

 東芝メモリの技術者のポテンシャルを存分に発揮させることができ、3次元NANDのビジネスが花開くように経営してくれるようなCEOがいる企業に買ってほしい。突然名前が挙がったブロードコムについては、現時点では判断できない。アップルに買われるとiPhone用の一部品をつくるだけの奴隷になるのでお勧めできない。その他、米ファンドが3社応札しているが、彼らは安く買って高く売ることしか考えていない。このようなマネーゲームの対象にして欲しくない。筆者の考えるベストは、「TSMC、グーグル、アマゾン」である。「ホンハイと紫光集団」も悪くない。

 東芝メモリの買収先は6月には決定される見込みである。したがって、筆者は、これら10回のコラムを4~5月の間に執筆する予定である。ただし、事態は動いており、新たな事実が発覚した場合は、執筆内容を変更する場合があるかもしれない。それについてはご容赦願いたい。

   
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