2024年4月26日(金)

世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2017年4月25日

 元の米外交問題評議会のリチャード・ハース会長が、北朝鮮への対応について、Project Syndicateのサイトに3月17日付けで掲載された論説にて、現状受諾、軍事行使、レジーム・チェンジ、外交という4つのオプションを例示し、結局米朝で直接交渉をすべきだとして交渉の具体的要素を議論しています。要旨、次の通り。

(iStock)

 トランプ政権の最初の危機は北朝鮮(米本土に到達する核搭載ミサイル)になるだろう。核物質のテロ・グループへの売却、あるいは通常戦力による韓国攻撃も危機を引き起こす。浪費する時間はない。危機は向こう数カ月、長くても数年のうちに起きる可能性がある。米歴代政権が取ってきた戦略的忍耐という対北政策の結末がこの事態になっている。

 一つのオプションは、北の核・ミサイル保有の量的、質的拡大を不可避だとして受け入れることである。その場合米国、韓国、日本はミサイル防衛と抑止力で対応することになる。しかしミサイル防衛は不完全であり、抑止力は不確実だ。日韓は核武装するかもしれず、それは軍拡競争のリスクを高める。

 第二のオプションは、脅威の進展ないし切迫に対して軍事力を行使することである。しかしすべてのミサイルや核弾頭を破壊できるかどうか不確実であり、仮に出来たとしても、北は通常戦力により韓国に報復できる。ソウルや在韓米軍は北の何千という大砲の射程距離の内にある。また韓国の新政権はこのオプションに反対するだろう。

 レジーム・チェンジの考えもある。しかし北の閉鎖性を考えると、それは真面目な政策というよりは希望的観測だ。

 こう考えると次のオプションは外交ということになる。米国は、日韓と緊密に協議をし、理想的には安保理による新たな決議と経済制裁を取った上で、北朝鮮との直接交渉を提案する。北にすべての核弾頭・ミサイルの実験を停止させる。核物質を他の国や団体に売らないことを確約させる。これと引き換えに、米国等は制裁を緩和する。また北との平和協定署名に合意する。北には核オプションの保持は認める(イラン核合意と同じ)が、それを実現することは禁止する。この時点で北朝鮮の人権問題を強く求めることはしないが、人権抑圧が続く限り北との関係正常化はあり得ないことを理解させる。全面的な関係正常化には北の核兵器開発計画の放棄が必要である。

 米国の出来ることの限界も定めるべきだ。米韓軍事演習は中止しない。韓国等に展開する米軍に対する制限は受け入れない。交渉は期間を区切って行う。

 中国が極めて重要である。中国は北の崩壊と韓国主導による半島統一に反対である。米国として統一問題を戦略的優位のために利用することはしないとの確約を与えるべきだ。中国と引き続き朝鮮半島で有りうるシナリオへの対処につき意見交換をしていくことは有益である。

 外交が成功する保証はないが、成功するかもしれない。失敗したとしても、誠実な努力をしたことを示すことができれば、それは今後軍事力使用を含む政策を取る場合国内や世界への説明の難しさを軽減することになろう。

出典:Richard N. Haass ,‘Out of Time in North Korea’(Project Syndicate, March 17, 2017)
https://www.project-syndicate.org/commentary/north-korea-strategic-options-by-richard-n--haass-2017-03


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