世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2017年4月25日

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 これは、米朝直接交渉の勧めです。ハースは、国務省政策企画部長も務めた、尊敬される米外交のプロであり、注意深く読む価値のある見解です。

 北の能力が現下のレベルに達した以上、オプションは限られています。また、ハースが正直に「浪費する時間はない」と言うのは、正しいです。特にICBM(大陸間弾道ミサイル)能力の向上が米国の危機感を高めています。トランプはICBMの発射実験はさせないと見栄を切りました(つまりレッドラインを述べた)が、受容可能なリスクの範囲内で大胆なオプションを見つけるのは容易ではありません。結局、ハースのいう安保理決議と制裁強化、加えて軍事姿勢の強化に裏打ちされた外交オプションは、現実味があるように思えます。しかし、それも中国の理解が前提となります。

 最初の三つのオプションについてハースが指摘する問題点は理解できます。特に軍事攻撃については、ハースが言うように今やクリーンな解決にはなりませんし、また大々的な報復を引き起こす可能性が高いです。実際の政策としては軍としても支持はしないでしょう。ただ、サイバー活動は、あり得るかもしれません。

平和協定交渉も受け入れる?

 外交オプションに関してハースが議論する諸々の要素は非常に興味深いと言えます。核・ミサイルの実験の凍結等と引き換えに、米国が米朝直接交渉を受け入れ、平和協定交渉も受け入れるというのは、従来の立場から言うと、「大胆」な転換です。イラン核合意のように核オプションは認めるがその実現は禁止するとしていますが、北の場合は既に核兵器を保有しているのですから、少し違ったアプローチが必要ではないでしょうか。人権問題を当初はプッシュしないとするのはトランプ政権の考えを慮っているのかもしれませんが、関係正常化のためには人権抑圧の解決が必要です。そういうことで、ハースは、全面的な正常化のためには核開発の廃棄が必要だとして、段階的アプローチを提案しているのでしょう。

 中国は統一を含む朝鮮半島の今後について懸念を持っています。朴槿恵政権の初期、韓国では、中国は韓国主導の半島統一を受け入れるようになっているとの見方が盛んに言われましたが、問題はそれ程簡単ではありません。

 こうした状況下、日米韓の緊密な意思疎通が重要です。日韓も米国と共に考えることが大事です。日韓がきちっとした現実的な対応をしないと、北の既成事実がどんどん強まるか、米の一方的行動になるか、米中の取引になるかです。米国では5月の韓国の選挙で親北朝鮮の野党政権ができる可能性が高いとして懸念が強まっています。例えば、先般訪韓したティラーソン国務長官は野党の考えをけん制する発言をしています。

  
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