事態は日本でも同じである。しかも、足元の消費者マインドが必要以上に悪化しているように見えることから、景気悪化を止めるには、落ち込む外需に替わって内需振興を図るとともに、消費者マインドを押し上げる施策も必要である。
もっとも、中国のように財政赤字が大してなく、企業部門が国有企業中心であれば、内需拡大策を政府の支出増によって行うことは十分可能であろうが、財政赤字の大きな日本ではそうは行かない。むしろ、貯蓄超過の大きい企業部門と家計の支出を拡大させる政策を中心に据えることが日本の課題である。そして、そこに消費者 マインドを押し上げる施策を組み込むことができれば、相対的に少ない資金で大きな効果を得られ、一石二鳥である。
多々あるマインドの抜本改善策
消費を下支えするのみならず、消費者マインドを盛り上げるには、消費者の将来不安の軽減が有効であることは間違いない。例えば、大規模な財政金融 政策で景気悪化を防止する姿勢を鮮明にすることが消費者マインドにはプラスであることは言うまでもない。また、非正規雇用者の失業増で、一部の人が路上生 活者になることに対しては、早急に雇用対策とセーフティネットの普及に努めることが安心につながる。さらに、外需の落ち込みが輸出企業を直撃して雇用悪化 の主因となっていることに対しては、自動車税の軽減や省エネ家電を購入する際の補助政策などで需要を下支えし、自動車、家電、IT関連等の輸出企業の業績悪化を緩和することが当面は有効であろう。
消費者マインドの改善には、もっと構造的な取り組みも欠かせない。国民年金に加入していないことが一部国民の将来不安を増すことになっているが、そ うであれば、この際基礎年金の全額税方式化を実現することは大きな対策となる。また、高齢者の医療介護が不十分で、いざというときの出費など将来不安が残るのであれば、医療保険や介護保険を一層充実させることが対策となる。
米国株に追随する形での株価下落が消費意欲の減退につながっているのだとすれば、2012年から予定されている「小額の上場株式等投資のための非課税措 置」(非課税口座を設け、そこで年100万円まで、5年間で合計500万円まで上場株式等に投資した場合、その配当所得、譲渡所得等を非課税とする措置) を少しでも前倒し実施すれば、その分国内資金が株式購入に回り、株価を支えることで消費意欲の減退を防ぐことになる。さらに、抜本的な少子化対策を行え ば、年金制度を支え、将来の日本経済の活力を増すことにつながって、消費者マインドの維持向上に大いに寄与することとなろう。