2024年7月16日(火)

中島厚志が読み解く「激動の経済」

2009年2月20日

社会保障見直しは経済成長につながる

 このように書くと、実現困難なことを書きたてているように思われるかもしれない。また、大きな政策には相応の財源措置が欠かせないが、当面大規模 な増税等財源手当てを行えるような環境にもない。しかし、将来不安に備えて貯蓄されている資産の一部が不安軽減によって消費に回ることとなれば、しかるべ く増税をしてもプラスの経済効果が期待できる。また、増税時期を数年後にずらせば、足元の厳しい経済情勢の中で増税をすることにもならない。

 ちなみに、基礎年金を全額税方式にすれば、年間合計12兆円規模の年金保険料納付がなくなる計算で、消費者の将来不安の軽減効果のみならず景気刺激効果も 抜群である。しかも、増税後ずれの間巨額の積立準備金(国民年金では約10兆円、厚生年金では基礎年金分として約60兆円)の取り崩しで対応すれば、財政赤字の拡大にもならない。付言すれば、現在の年金制度は賦課方式であって積立方式ではないので、将来の年金支払のための準備金は理屈上不要であり、ある程 度の準備金保有は必須としても、やむをえない場合に取り崩すことは可能である。

 抜本的に消費者マインドを改善する施策案が考えられるということは、我々の多くが現在の社会保障に満足していないということであろう。しかも、厳しい財政状況のままで 今後少子高齢化が一層進展すれば、社会保障水準はさらに低下していく。そうであれば、現在中福祉と言われる社会保障水準を引き上げ、充実した年金制度、医療介護制度を有し、少子化対策がなされる高福祉社会を目指すことも大きな選択肢である。

 もちろん、このような高福祉社会を実現するためには、相当な高負担を覚悟せざるを得ない。中福祉低負担と言われている日本の現状からすれば、高福祉社会は 国民にとって大きな選択であり、負担の大きさに躊躇する向きも多いだろう。しかし、現在の社会保障の水準に大きな不安を感じているのが大多数の国民の意識 だとすれば、構築すべき社会は高福祉高負担社会しかあるまい。負担は際立って大きくなるものの、それにもかかわらず世界最高水準の豊かさを享受している北 欧諸国の例もある。

 現在の日本の社会保障水準に満足しない人々は多いが、それでも世界的に見れば国民皆保険の実現や結果としての日本人の世界最長寿など素晴らしい面もあり、 制度自体破綻などしていない。しかし、最近の消費者マインドの悪化を見ると、抜本的に日本経済のあり方を考え直さなければならないようにも見え、その一環として社会保障制度の抜本見直しによる将来不安の解消は極めて大きな意味を持つ。特に、消費者マインドと消費の構造的改善が急務の日本としては、将来不安のない社会こそが、財政支出にあまり頼らない内需主導による日本経済の安定した成長につながる究極策であり、ぜひ実現に向けた対応を望みたい。

◆次回更新は3月13日(金)を予定しています。


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