浜野 今だったら教育委員会で問題になるよね。アカデミック・ハラスメントだとか。でも、言われたときはどうだったの?
原 いや、きっとそうなんだろうと思ったけど(笑)。ほんとに、授業とかが頭に入ってこないなというのは思ってましたね、子供のころから。
浜野 望む高校へ入れなくて、大学もあきらめて、アニメーションの専門学校へ行って。
ある種、自分の望みが破れていくことの連続だったよね。就職では運があってCM・プロダクションに入れたけど、していたのは自分の望む仕事じゃなかったという。進行をやってた。
原 ええ。
浜野 よくそこで夢というか、アニメーションへの夢が途切れなかったですね。
「いつかは絶対」なんて思わなかった
原 「いつかは絶対」という気持ちは、そんなになかったんですよね。
なんとなく、ほかのことよりもアニメーションのほうが向いてるとは思ってたけど。
ただ、志はそんなに高くなかったですよ。演出になりたいって気持ちはあったんですけど、「いつかは絶対長編の監督になってやるぞ」とか、そんな意識はあんまりなかったですよね。
浜野 じゃあ、プロダクションに入って制作進行をやっているときは、それはそれでよかったんですか。
原 そうそう、そうそう。だから、そのときはこのままCMのディレクターとかになっていくのかも、みたいな気がしてた。悲観もしてなかったけど、だからといって楽観もしてなかったですけどね。仲良くさせていただいてる中島信也さん(本欄前回シリーズ参照)のように、でっかい会社にいたわけじゃなくて、ちっちゃい会社だったから。やってる仕事だって、悲しいようなもんばっかりだったんで。
だから、そこにそのままいるっていうのは、あまりいいとは思ってなかったですけどね。かといって、そんな大それた、「いつかはナニナニしてやるぜ」とか、野望めいたものは全くもっていなかったですけどね。
浜野 でも、最終的に、希望してた職種に就いちゃったわけでしょ。チャンスを実現できるというのは、なんかあったんだと思うけどね。
原 まあ、意外と粘るんですね、きっとね(笑)。
浜野 しぶとい…。
原 しぶといっていうか、往生際が悪いとこはあります。
いつも勇気がないんですよね。それはずっと思ってます。普通の人だったら、どんどん自分から飛び込んでいくんだろうけど、僕はいつも遅れてて。
専門学校のときも、まわりのやつらがこんな学校にいてもしょうがないからっていって自分からコネつくって就職したりしていってるのを横目で見て、「すごいなあ、俺にはできないなあ」て思いながら見てたりするようなタイプだった。
弱い人間の強さを描く日本映画
浜野 でも、そういうことの強さっていうのもあるね。