2024年6月25日(火)

ベストセラーで読むアメリカ

2010年8月11日

 なにもないテキサス州の田舎町で、一人娘として大事に育てられた幼少期、読書に没頭した思春期などを描く本書の前半部分は、情緒豊かで読み応えがある。第2次世界大戦で、欧州に出兵した父親が持ち帰った写真を巡るエピソードは印象的だ。ドイツ中部の街ノルトハウゼンでナチスの強制収容所を解放した部隊に父親は所属しており、強制収容所の悲惨な状況を写真におさめていたのだ。

 He finally arrived home in January of 1946. Along with his meager gear, he carried with him eight tiny two-by-three-inch photos from Nordhausen, Germany, the site of the Mittelbau-Dora concentration camp. Mother kept them along with some letters in an old latch-top cigar box. As a child, I used to take them out one by one and examine them, holding them up to the light to study the tiny images frozen in time by the camera’s lens, trying to decipher them. They were pictures of row upon row of bodies of the dead, some bloated, some so skeletal that they were little more than bones with the last remnants of skin stretched over them, stark white, sunken torsos in which you could count every rib. (p13)

 「父はようやく1946年に家に帰ってきた。貧相な身の回り品と一緒に、ドイツのノルトハウゼンにあったミッテルボ・ドラ強制収容所の写真を8枚持ち帰っていた。母はその写真を何通かの手紙と一緒に、留め金つきの古いシガーボックスにしまっていた。子どものころわたしは、その写真を1枚1枚取り出してはじっくりみたものだった。光にかざして、カメラのレンズがとらえた小さな映像をみつめ、いったい何なのかを読み解こうとした。それは死体の列だった。あるものはむくみ、あるものは骨と皮だけで、硬直して白く、くぼんでいる胴はあばら骨の本数を数えられそうだった」

「闘うアメリカ」の現実

 本書には、強制収容所の外に無数の死体が並ぶ様子を撮影した写真が収められている。このような悪を世界から追放するために、アメリカは戦ってきたし、これからもアメリカは戦い続けるという決意を表明するため、回想録には似つかわない写真をあえて掲載しているのではないだろうか。

 この回想録にはなぜか不幸な死の影がつきまとう。本書の中では、高校生だった17歳の時に乗用車を運転中、同じ高校の男子生徒が運転する車と出合い頭の衝突事故を交差点で起こし、その男子生徒が死亡した件についても赤裸々に語っている。この事故については、2000年の大統領選にブッシュが出馬した際、メディアが暴露して大々的に報道した。しかし、ローラ・ブッシュ本人は沈黙を守ってきた。本書の中でも本人が書いているが、この事故に関しては当時から限られた身内以外には話をせず、自分の娘にも教えていなかったという。事故について本書では、街灯のない暗いテキサス州の田舎町の道路を、友達を乗せて走っていて、「止まれ」の道路標識を見落として交差点に入り、車とぶつかったと述懐している。もともと、死亡事故が多発していた場所だったという。


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