2024年12月3日(火)

世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2017年7月18日

 英フィナンシャル・タイムズ紙のラックマンが、6月19日付の同紙で、カタールの問題は世界的影響を持ち、湾岸諸国が繁栄を謳歌してきた時代の終わりかもしれないと述べています。主要点は次の通りです。

(iStock.com/alexkava/Vasilyevalara/NLshop/mgordeev/ponsuwan)

 過去6年アラブには二つの世界があった。シリア、イラク等では問題が続き、他方カタール、アブダビなどは世界のレジャー、ビジネス、金融ハブとして繁栄してきた。湾岸諸国の繁栄は、他の地域の暴力的な状況とは無縁であった。

 しかし二つの世界の区別がなくなっている。サウジ、バーレーン、エジプト、UAEが、カタールを封鎖する行動を取った。理由は同国が地域のジハード運動を支援しているということである。シリア等と違って、湾岸諸国は世界経済を揺るがし、この地域の安全保障問題は世界に影響を与える。

 湾岸諸国の経済的役割は国の規模を超えている。カタールは世界最大の液化天然ガスの輸出国だ。カタール投資公社は大手銀行や欧州企業の大株主だし、大投資家でもある。2022年にはW杯を主催する。ドバイは中東での主要な訪問都市になり、世界一高いビルを擁し、エミレーツ航空は世界最大級の航空会社だ。アブダビ投資公社は総額8000億ドルの資産を持つ世界第二の政府系ファンドである。サウジは中東最大、最強の国で、世界最大の石油産出国だ。

 緊張は以前から増大していた。サウジはカタールが独立して国際舞台で活躍することを快く思って来なかった。特にムスリム同胞団に好意的なカタールのアルジャジーラ放送をサウジは忌み嫌った。またカタールがイランと過度に接近していることも問題とされた。イランに対する恐怖はサウジとUAEがイエメンでの紛争に介入する要因にもなった。カタール封鎖の皮肉な結末は、カタールがイランとの関係を更に緊密化させることかもしれない。

 通常であれば米国が調停に乗り出すが、トランプはサウジ側に付いている。彼は先月サウジを訪問した際、サウジ主導の封鎖に事前の承認を与えた可能性がある。他方、国務省、国防省は、米国の中東最大の空軍基地がカタールにあることも有り、より中立的な姿勢を打ち出している。カタールに米軍基地がなかったら同国はサウジの軍事介入にもっと脆弱だっただろう。

 サウジとUAEが如何なる決着を描いているかは明らかでない。早期に紛争を解決しないと、軍事紛争化の危険があるし、封鎖による経済的打撃も大きい。カタール問題は、湾岸諸国が他の中東地域で起きている悲劇から隔絶され、繁栄を謳歌してきた時代の終わりを示しているかもしれない。

出 典:Gideon Rachman ‘The Qatar crisis has global implications’ (Financial Times,
June 19, 2017)
https://www.ft.com/content/7bfa0d0a-5444-11e7-9fed-c19e2700005f


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