2024年11月22日(金)

WEDGE REPORT

2017年7月24日

金融業務システム国内シェア4割のFintech企業

 銀行など金融業向けシステム開発の全国大手も、シベリアにあった。やはりノボシビルスク国立大学OBが立ち上げた民間企業「金融技術センター」(CFT)である。

金融技術センターCFT本社(写真はキリル文字表記)

 会社のメーン部門は、ロシアの銀行向け業務システム開発だ。国内シェアは約40%で、名だたる銀行に採用されているという。また別部門として、データの分析加工サービスも展開。これは個々の顧客ごとにデータベースを構築・運用し、分析レポート作成なども引き受けるものだ。

 これらはなかなか一般市民の目に入らない「裏方業務」だが、誰にでもイメージしやすい部門として、小売業やサービス業、金融業でよく使われる顧客カードシステムの運営もある。例えば、ロシア最大の航空会社アエロフロートのマイレージシステムが、CFT社によるものだという。金融でも、やはり最大手銀行ズベルバンクが同社のポイントシステムを採用している。現在、なんらかの形でCFTのシステムを取り入れているロシアCISの銀行は約500に達する。同社の社員数は約2500。ロシアだけでなくカザフスタンやタジキスタン、モルドバにも拠点を構える。

 CFTの設立は1991年。事業の始まりは、ノボシ大学を卒業したばかりの青年が地元銀行から依頼を受けて業務システムを開発したことだったという。その後1994年に開発した、ロシア国内版クレジット決済システムが同社を大きく成長させることになる。例えるならVISA・マスターのようなクレジットカードのロシア国内限定版、のイメージである。

 社会主義が崩壊して経済が混乱していた90年代、どの企業も給与用の現金不足に頭を悩ませていたころだ。現金を確保できたとしても今度は治安上の不安が生じる。そんな中、企業がCFTのクレジット決済機能付き社員証カードを発行して、社員がクレジットで買い物したときに代金を会社の口座から引き落とすことで給与に代える、という方法が広まった時期があったという。このシステムはロシア全土の小売・サービス業界、金融業界に普及。同社の今の事業基盤となる。

左下の王冠マークが独自クレジットブランド

 近年ではVISA・マスターがロシア全土に浸透し、CFTのクレジットで支払おうとする客はほとんどいなくなっている。CFTはこれを受けて、これまで店々に行き渡らせた同社の決済システムをVISA・マスターの決済処理にも対応させ、大きな手数料収入を得ている。例えば、買い物客がVISAカードで支払ったとき、店側はクレジットカードの処理をするためにCFT社のシステムを使い、そのたびにCFT社に手数料が落ちる構図だ。同社のポガルスキー・エブゲニー相談役によれば、「ノボシビルスク市内なら決済の98%は当社が関わっている。中国人がユニオン・ペイで買い物をするときも、当社のシステムを通ることになる」と明かす。

 当然ながら、ビットコインなどブロックチェーン技術を応用した仮想通貨についても内部で研究を進めている。来年にはロシア政府がこうした仮想通貨に対する方針を打ち出すと言われており、それを待ってCFT社も何らかの動きを見せる模様だ。

 シベリアのハイテク企業はまだまだある。中編に続く。

  
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