前向きに読み解く経済の裏側

2017年7月31日

»著者プロフィール
閉じる

塚崎公義 (つかさき きみよし)

経済評論家

1981年 東京大学法学部卒、日本興業銀行(現みずほ銀行)入行。主に経済調査関連の業務に従事。2005年 銀行を退職して久留米大学へ。現職は久留米大学商学部教授であるが、当サイトへの寄稿は一個人として行うものであるため、肩書きは「経済評論家」とする。

女性管理職比率を無理に高めることも危険

 「女性の活躍を促そう」という趣旨には大いに賛成ですが、無理はいけません。入社20年目で部長に昇格する会社があったとして、部長の3割を女性にしたいと考えたとします。しかし、20年前の幹部候補新入社員に占める女性比率が3割より低かったとしたら、頑張りすぎるべきではありません。

 無理に女性を部長に抜擢すると、能力的に劣る女性も部長にせざるを得ません。それ自体、会社にとって有害なことですが、抜擢された女性にとっても、「女性だから部長になれた」と陰口を叩かれます。本当にそうならば仕方ないのですが、中には本当に実力で部長になったのに、「女性だから部長になれたのね。よかったね」と言われる人も出てくるかもしれません。

 そして、後輩の女性にも悪影響が出かねません。「女性なら、仕事ができなくても部長になれるから、頑張らなくても大丈夫」と考えるようになるかもしれないからです。これは後輩女性本人にとっても不幸なことですし、会社にとっても不幸なことです。

 強いてメリットを探すとすれば、学生の採用に際して「部長の3割が女性です。優秀な女性は、是非我が社に来て活躍して下さい」と言えることでしょう。それによって、優秀な女性が新入社員の3割を占めるようになれば、20年後の会社は上手く行くかもしれません。それまで会社が持てば、の話ですが(笑)。冗談はさておき、学生の採用に際しては、「20年後には必ず部長の3割は女性にします」と誓っておけば十分だと思います。

最低賃金制度が良いか悪いかは、ケース・バイ・ケース

 最低賃金制度によって、最低賃金が定められています。これは、「強欲な雇い主が非常に安い時給で労働者をこき使う」ことを禁止するものですから、まさに弱者保護を目的とした制度です。しかし、これによって「どうしても金が欲しい。どんな安い給料でも働くから雇って欲しい」という人が「最低賃金の半分なら雇ってやりたいが、そんなことをしたら政府に怒られるから、可哀想だが雇ってやれない」と言われてしまうかもしれません。最も困っている弱者にとっては、むしろ有害な効果となってしまうかもしれないわけです。

 もっとも、最低賃金制度については、他の弱者保護よりは考えることが多そうです。労働者階級全体としてプラスの効果があるならば、悪法とは言えないからです。たとえば、最低賃金を定めることで、賃金水準は大幅に上昇する一方で、発生する失業者は僅かである、という場合ならば、最低賃金を定めた上で、本当に困っている人には、生活保護等の別の救済策を考えれば良いからです。

 最低賃金については、それ以外にも様々な論点がありますので、別の機会に詳しく論じましょう。

  
▲「WEDGE Infinity」の新着記事などをお届けしています。

関連記事

新着記事

»もっと見る