すべてのスタッフは成長途上にある
――自分なりの人間観を持つことは、作品づくりと深い関係があるのですね。それはチームをマネジメントするうえでも役に立つことはありますか?
村田:そうですね。この3欲求軸を意識するようになってから、こちらの打ち出しに対して、スタッフのリアクションがそれぞれ異なることを自然に受け止められるようになりました。「この人のモチベーションは、利己、利他、利知がどういうバランスで構成されているのか」。そこを想像すると、成果物をチェックする視線も変わります。それは、相手に投げ返す時のアプローチの変化にも繋がります。
――監督としてスタッフと接する時に意識していることはありますか?
村田:「すべてのスタッフは成長の途上にある」ということです。自分も含めスタッフは皆、この仕事を通じて成長しようとしているんです。
その途上において、この仕事はどういう意味を持っているのか。カウンセラーみたいに事細かに立ち入るわけではありませんが、監督として人の成果物をチェックする時は、そこを常に考える必要があると思います。
監督業というのは、人の力を借りないと完結しない仕事です。だからこそ、その人のキャリアにとってその仕事がどんな意味を持つのかを考えることは重要だと思っています。
――ありがとうございました。
▼村田和也監督の作品づくりにまつわるマインドマップ(※初公開資料)
・『正解するカド』絵コンテのガイドライン
・『正解するカド』処理上の注意点
・『仕事』についての考察(3欲求の整理)
思考を整理して、瞬時にジャッジを下す
ジャッジの早い上司と遅い上司、どちらが好ましいでしょうか。おそらく多くの方が前者と答えると思います。しかし、どんなにジャッジが早くてもそこに一貫性がなければ、現場は終始振り回されることになります。一貫性のあるジャッジを瞬時に下すには、考え方を根本までしっかり煮詰めておくことが必要です。また、マインドマップなどを用いて指示の全体像を可視化して現場と共有することは、大掛かりなプロジェクトをひとつの方向に導くたしかな原動力にもなるはずです。(編集部より)
'68年、静岡県生まれ。'00年からフリー。アニメ作品・アニメ業界への取材を行っている。著書に『「アニメ評論家」宣言』(扶桑社)、『チャンネルはいつもアニメ』(NTT出版)、『声優語』(一迅社)、『ガルパンの秘密』(廣済堂新書、執筆は一部)などがある。TV番組に出演したり、複数のカルチャーセンターで講座も担当する。