ニューヨーク・タイムズ紙が7月21日付で、中国は国際社会で環境保護に関心を見せ始めるそぶりを見せる一方、海外投資先での環境破壊には関心を払っておらず実態を伴っていない、と批判する記事を掲載しています。要旨は次の通りです。
トランプ大統領が環境保護から後退し、パリ協定からの離脱を表明する中、中国は気候問題における指導的立場につくことを望んでいる。中国は、太陽光発電により100カ所以上の火力発電所を代替することを計画、2020年までに少なくとも3610億ドルの再生可能エネルギーに投資するとしている。
これらは望ましいことではあるが、中国は、国内の汚染問題だけでなく、地球規模の問題にも対処する必要がある。
ラテンアメリカとカリブ諸国における中国の融資の事例を見てみよう。
中国発展銀行と中国輸出入銀行によるラテンアメリカとカリブ諸国に対する融資は、主に石油採掘、石炭鉱業、水力発電ダム建設、道路建設など重要な環境効果を伴うプロジェクトに対するものだ。2017年の中国からラテンアメリカへの公共セクターへの融資の半分以上に当たる172億ドルが化石燃料産業に投じられている。
採掘プロジェクトの多くは、アマゾンの熱帯雨林のような保護すべき地域で行われている。アマゾンは、世界最大の炭素吸収源であり、グローバルな気候変動への対策において決定的な役割を果たしている。この地域における化石燃料生産の拡大は、CO2排出量の増大と森林減少をもたらしている。
中国マネーは、世界で最も多様な生物が生息しているとされるエクアドルの自然保護区等における化石燃料産業の成長を促進している。2010年以来、中国がエクアドルに提供した174億ドルの資金の一部は「石油ローン取引」(石油や燃料の販売を通じて支払われる)になっている一方、エクアドルにおける真の持続可能エネルギープロジェクトへの中国の投資はわずかである。
中国は、ブラジルでもアマゾン流域における新たなコモディティ回廊を建設するブラジル政府への協力として、開発資金と国営企業を通じた直接投資によって、多額の資金を投じている。
もう1つの例は、南極を除いて南半球最大規模の氷河のあるパタゴニアだ。中国の「葛洲集団」は、中国開発銀行、中国銀行、中国工商銀行からの資金提供を受け、47億ドルの水力発電複合施設の建設を進めている。このダムは、ユネスコの世界遺産であるアルゼンチンのロス・グラシアレス国立公園の氷河にダメージを与える可能性がある。
中国は、アフリカなどその他のあらゆる地域でも、開発への融資により気候危機を悪化させている。
中国は、少なくとも机上では、国外の環境社会政策について別の方法を検討し始めている。2012年には、中国は銀行に対し、「信用活動に関しては、環境リスクと社会的リスクを効果的に特定、監視、管理すること」とする環境金融指令を発出したが、これらのガイドラインはほとんど守られていない。
実際、ニカラグアやエクアドル、ペルーでは、中国の活動に関連する地域住民の殺害事件や緊急事態宣言、中国企業への法的措置などがとられている。
中国は、自国に対するのと同様の環境への懸念を持って、国際プロジェクトに取り組むべきである。中国政府は、地球規模の生態系に重要な影響を与える地域での採掘事業支援を抑制するかわりに、クリーンな再生可能エネルギープロジェクトに多くの投資をすべきである。そして市民社会制度は、これらの取り組みに圧力をかけ続けるべきであり、開発途上国政府は、このようなガイドラインを二国間協定とプロジェクト契約に組み込むべきである。
出典:Paulina Garzón & Leila Salazar-López, ‘China’s Other Big Export: Pollution’(New York Times, July 21, 2017)
https://www.ft.com/content/ed033dae-6c69-11e7-b9c7-15af748b60d0