2022年10月1日(土)

世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2017年8月28日

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 本論評の筆者のうち、ガルソンは「中国ラテンアメリカ持続可能開発イニシアティブ」の代表、ロペスはアマゾンウォッチ理事を務めています。

 中国の対外援助には、環境破壊をともなう行動がみられるとして、とくにラテンアメリカ地域、なかでもブラジル、アルゼンチンへの環境破壊に対して警鐘を鳴らす論評です。東南アジア諸国、アフリカ諸国への中国の援助の実態は比較的よく知られていますが、ラテンアメリカ地域への援助の実態については一般には十分に知られていません。

 中国の対外援助は、約束した内容がはたして守られるかどうか、また中国の「ひもつき」援助は被援助国の利益にどれほど役立つのか、議論の余地が多くあります。中国が対外援助活動に乗り出したのは、1990年代後半以降のことです。それまでは中国は、みずからを「開発途上国」の代表と位置づけて来たので、短期的に主要援助国のメンバーになることは容易ではありません。

 主要先進国が合意してきたOECDの対外援助の諸条件に、中国は縛られることはありません。というのは、「途上国」との位置づけだからです。中国の対外的野心は増大していますが、それに見合うだけの援助の透明性や責任意識が欠如しているという点は、本論評の指摘する通りです。

 トランプ大統領が環境保護から後退し、パリ協定からの離脱を表明した機会に、中国としてはその間隙をついて政治的影響力を増大させたいと考えているに違いありません。

 ラテンアメリカとカリブ諸国への中国からの融資額は、2005年からの10年間のあいだに1410億ドルに上ったといいます。これら融資は、主として中国国営企業である中国発展銀行と中国輸出入銀行によるものです。本来、中国の国営企業は党・政府と一体であるといえますが、それら融資のうち半分以上が化石燃料産業に対するものです。アマゾン流域地帯の石炭鉱業、道路建設、水力発電所などのプロジェクトに対し融資がおこなわれていますが、その結果、アマゾンの熱帯雨林は多くの被害をこうむりつつあります。

 エクアドルにおいては、中国からの援助の対象である石油資源のほとんどはアマゾン上流の熱帯雨林に存在し、ブラジルにおいてもアマゾン流域に化石燃料産業開発のための多額の資金が使われています。そのため、気候変動対策の一つの大きなカギとなる熱帯雨林の環境破壊が進行しつつあります。また、アルゼンチンのパタゴニア地域においては、中国による大規模水力発電の施設が建設されつつありますが、氷河を保護するための考慮がほとんど払われていないとのことです。

 こうした行動をとる中国が環境問題で世界をリードし得るというのは理屈に合わないことですが、トランプ大統領による米国のパリ協定からの脱退は、そうした錯覚を世界に与えた要因の一つと言えるでしょう。

  
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