9月になり「敬老の日」が近づくと、やはり祖父母のことを思い出します。中でも、母方の祖母は大好きで、思い出も一番多い人です。そして、血縁のある人との初めての別れも、この祖母でした。
『はやくあいたいな』(絵本館)は、離れて暮らすおばあちゃんと孫のまおちゃんが、それぞれ「会いたい!」と思った気持ちをすぐ行動に移したはよいけれど、そのために何度もすれ違いを繰り返す、ハラハラドキドキ、でもあたたかい気持ちのあふれたお話です。私もまおちゃんと同じような思いで、祖母の家へ出かけたものでした。幼稚園から小学校時代の夏休みには、何回も一人で滞在して、いっしょに過ごしました。どこへでも、祖母の後ろをついてまわり、畑仕事を手伝ったり、買い物に行ったり。母や叔父叔母たちの、子どもの頃の話を聞くのも楽しみでした。祖母が元気で、一番「おばあちゃん」という立場を満喫していた時期と私の子ども時代がうまく重なった、なんともラッキーなめぐり合わせだったのだと思います。
初めて経験する“別れ”
そんな祖母との別れは、中学2年の晩秋でした。人が亡くなるということをそれなりに理解できる年齢になっていましたし、長患いの末だったので、ただ悲しいという思いだけではなかったと記憶しています。私が反抗期といわれるような年齢になり、祖母の存在が甘えたリ、守られたりするだけではなくなっていたことも、無関係ではないかもしれません。今更のように、もっと優しくしてあげればよかったと、思い出すたび心が痛みます。
そして今、私の母と孫にあたる娘との関係に、かつての祖母と自分の姿が重なります。母と娘の場合は、同居していることもあり、その関わりは日常レベルです。私と祖母の間では起こらなかったやり取りや行き違いも生じてしまいます。娘が小さかったころ、私が留守にしていても、学校から帰れば母がいて、話し相手になってくれました。母がどこかへでかければ、必ず娘へのお土産がありました。でも、そのお土産の好みが合わなくなったり、帰りが遅いとか、勉強は大丈夫かなど言われれば、煙たくもなるというものです。娘にとっての成長という時間の流れは、母には老いの訪れであり、双方にとって、楽しいことばかりではない状況になるのも、やむを得ないことでしょう。それでも、私が祖母と別れた年齢を越えて母と付き合っている娘は、朝夕の挨拶や、やさしい言葉をかけるなど、祖父母をいたわるようになりました。
『ぶたばあちゃん』(あすなろ書房)を初めてみたとき、祖母に再会したような気持ちになったのは不思議です。孫娘と穏やかに暮らしていたぶたばあちゃんは、ある日、自分に残された時間がもうわずかだと気が付きます。そして、きちんと身辺整理をし、孫娘に自分がいなくなった後の指示を出し、静かに別れの時を迎えました。私の祖母は、むしろ心残りをたくさん抱えたままだったと思います。それでも、自分がいなくなった後のことや愛しいものへの思い…というのは同じように感じたのだと思います。亡くなるもの、見送るもの、それぞれが相手のことを思い、その思いを受け止めることの大切さを、この本は教えてくれます。私には、ある種の憧れと理想を示してくれる、大好きな本ですが、娘にとってはどうでしょうか? 小さい頃、初めて読んだときには、ただ悲しいお話と感じたようですが、今は、私と私の母を背中に感じながら、引き継ぐものの目線で、ちょっとしたプレッシャーと寂しさを感じながら、心にとめているようです。