慶応年間(1865~68年)の頃、長崎にいた坂本龍馬も見たであろう国際色豊かな祭りがある。諏訪神社の例大祭、長崎くんちだ。
「376年の歴史をもつ祭りで、幕末にも行われていたので、龍馬が見た可能性は大いにありますね」
と話すのは、長崎くんち踊町〔おどりちょう〕(その年の当番の町)の幹事町〔かんじちょう〕代表者、髙田節雄さん。長崎は江戸時代、日本が海外にむけて開いた唯一の貿易都市として、また天領として繁栄していた。長崎くんちは、そんな町の経済力や異国文化を背景に生まれた。
ちなみに、「くんち」とは九日(くにち)が訛ったもので、旧暦9月9日の重陽〔ちょうよう〕の節句にあわせて祭りを行ったことに由来するという説が有力。祭りは現在、10月7日から3日間にわたって続くが、幕開けは、7日の午前中に諏訪神社で行われる「奉納踊」だ。
「南蛮船や竜宮船、御座船〔ござぶね〕など和・洋・中の船と踊り、異国情緒をふんだんに取り入れた演〔だ〕し物が踊り場いっぱいに繰り広げられます。およそ5トンの南蛮船をまわす時には、巻き起こる風の音が聞こえるほど。この迫力や華麗さは、実際に見ないと分からないでしょうね」
踊りは市内59町が毎年持ち回りで行い、7年に1回当番が回ってくる。平成22年の踊町と演し物は、馬町〔うままち〕(本踊)、東濵町〔ひがしはまのまち〕(竜宮船)、八坂町〔やさかまち〕(川船)、銅座町〔どうざまち〕(南蛮船)、築町〔つきまち〕(御座船・本踊)の5カ町と、特別参加の籠町〔かごまち〕(龍踊〔じゃおどり〕)だ。
それぞれに趣向を凝らした演し物は甲乙つけがたいが、特に龍踊は、唐人服をまとった龍衆〔じゃしゅう〕10人がおよそ20メートルの青龍を操り、月をイメージした黄金の宝珠を追いかけるもので、その動きたるやまるで生きた龍のよう。ラッパや銅鑼が鳴り響く唐楽拍子がいっそう祭りムードを盛り上げる。
踊りは諏訪神社のほかにも3カ所の踊り場で披露され、市内各所で「庭先回り」として演じられているのを間近に見ることもできる。
エキゾチックでパワフルな祭りを目にして、龍馬もさぞかし興奮したことだろう。
長崎くんち
〈開催日〉2010年10月7~9日
〈会場〉長崎市・諏訪神社ほか(長崎本線長崎駅下車)問長崎伝統芸能振興会
〈問〉095(822)0111
http://www.nagasaki-kunchi.com/
http://www1.city.nagasaki.nagasaki.jp/kanko/
■「WEDGE Infinity」のメルマガを受け取る(=isMedia会員登録)
週に一度、「最新記事」や「編集部のおすすめ記事」等、旬な情報をお届けいたします。