世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2017年10月2日

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 この論説は、日米韓三カ国が北朝鮮の核の脅威に晒される事態において、三カ国の安全保障上の利害関係が必ずしも同一ではないかもしれない可能性を指摘して、その結束を深化させるため、三カ国が究極的には集団防衛条約を目指すべきことを主張しています。しかし、これは現実性のない夢想に過ぎません。遠い将来のことだとしても、韓国と日本が同盟関係になり得るという夢を弄ぶ時でもありません。日米の二国間の安全保障体制を三国間の同盟に作り替えることで、三カ国の安全保障上の利益を常に同一にし得るわけではないからです。最も重要なのは、北朝鮮に対する最大の抑止力である米国の軍事力の維持ですが、そのことは三国間の同盟に作り替えることと関係がありません。

 論説は、米国が北朝鮮の核弾頭搭載のICBM(大陸間弾道ミサイル)に攻撃され得る状況になると韓国ないし日本の安全保障と米国の安全保障が切り離されるというディカプリング(decoupling)の問題が生じ得ると指摘します。例えば、朝鮮半島の武力統一を目指す北朝鮮の侵攻が行われた場合、北朝鮮の核攻撃による報復の危険に晒されてはいても、米国は(要すれば核をもって)韓国を防衛する用意があるかという問題です。これは厄介な問題ですが、目下の最良の保険は、韓国に米軍が駐留することです。駐留米軍が導火線となり、危機の当初から米軍も当事者として関与せざるを得ない立場に立つこととなります。韓国海軍艦艇の撃沈、韓国が支配する島への砲撃、非武装地帯における挑発など、低レベルの挑発の場合に、韓国と米国との間で対応を巡って齟齬が生じる可能性を論ずる向きもありますが、過度の心配はむしろ有害だと思われます。

 論説は、もう一つの問題として、北朝鮮が日本をその核兵器の標的とし得ることは、米国が日本にある基地を使って朝鮮半島の事態に介入することに日本が抵抗することになり得る、と指摘します。これは何とも嫌な指摘です。しかし、日米安保条約上、米国が日本にある基地を使って戦闘作戦行動を行うには事前協議を行い、日本政府の同意を得る必要がありますが、この問題には既に回答が出ています。すなわち、1969年11月、沖縄返還を達成した日米首脳会談の際、当時の佐藤栄作総理は、ワシントンのナショナル・プレス・クラブでの演説で次の通り述べています:「韓国に対する武力攻撃が発生するようなことがあれば、これは、わが国の安全に重大な影響を及ぼすものであります。従って、万一韓国に対して武力攻撃が発生し、これに対処するために米軍が日本国内の施設・区域を戦闘作戦行動の発信基地として使用しなければならないような事態が生じた場合には、日本政府としては、このような認識に立って、事前協議に対し前向きにかつすみやかに態度を決定する方針であります」。今後とも、この方針に従って対処するということになるはずです。


  
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