2024年12月8日(日)

世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2017年10月2日

 米国のシンクタンクAEIのマイケル・マッザ研究員が、北朝鮮の核とミサイルの脅威に対しては、日米韓の三カ国は結束を謳うだけでは足らず、同盟関係の強化を図るべしとする論説を、8月30日付けウォール・ストリート・ジャーナル紙に寄稿しています。要旨は次の通りです。

(iStock.com/bobaa22/solargaria/Giuseppe Ramos/cabral_augusto83)

 北朝鮮が日本の上空を通過する中距離弾道ミサイルの発射実験を行った。北朝鮮が核弾頭とミサイルを合体させ、核弾頭を日米韓のいずれにも確実に到達させることが出来るようになるのは時間の問題だと見られる。この事態はこの地域の安全保障構造を覆す。

 金一族が核兵器能力を追求する目的の一つは米国の韓国および日本との同盟関係を不安定化させ、究極的には切り離すことにある。その目標は中国の利益ともたまたま合致する。

 北朝鮮が米国本土を攻撃し得るようになると、韓国と日本の防衛に対する米国のコミットメントについて両国で懸念を生むであろう。つまり、北朝鮮は両国の指導者が米国はロサンゼルスを犠牲にして釜山と大阪を守る用意があるか訝ることを余儀なくしつつある。

 更に、北朝鮮が日本をその核兵器の標的とし得ることは、米国が日本にある基地を使って朝鮮半島の事態に介入することに日本が抵抗することになり得る。つまり、同盟国の信頼性に対する懐疑の念は双方向であり得るわけである。

 声明や力の誇示のようなコミットメントの保証は有用ではあるが、限界がある。敵がその関係をほつれさせようとするのだから、三カ国はその関係を深化すべきである。このために、米国は三カ国の外務・防衛の閣僚会議をなるべく早く招集すべきである。議論の焦点は、短期的には危機の場合の役割と責任の分担を定めること、中期的には北朝鮮の脅威に対する防衛計画を調整すること、そして甚だしく論議を呼ぶであろうが北朝鮮を対象とする集団防衛条約に向けて前進すること、に置かれるべきである。究極的には北朝鮮の一国に対する攻撃は三カ国全てに対する攻撃と見做されるべきである。

 韓国人の多くはかつて植民地支配を受けた日本との同盟に尻込みするであろう。他方、日本では憲法問題を惹起するであろう。しかし、安倍総理と朴槿恵前大統領は歴史問題を超えて協力することが出来ることを示した。また、日本は集団的自衛権の行使を容認することとしたので、いずれは相互的な安全保障上の義務を受け入れることになるかも知れない。結局のところ、朝鮮半島における事態は日本の安全保障に直接影響すると常に理解されて来たのである。

 以上のような同盟強化の努力は金正恩に彼の核兵器の価値を考え直させるかも知れない。より重要なことは、中国に対する圧力になることである。中国は北朝鮮問題の最終的な解決のために三カ国と協力することを選ぶことが出来る。あるいは、中国が嫌って来たことであるが、米国のハブ・アンド・スポーク型の同盟関係が集団防衛型に発展することを我慢することも出来るが、中国は北朝鮮の脅威だけに絞った同盟の範囲がいつの日か広がるかも知れないことを承知である。

 もし、三カ国が地域の安全保障環境を有利になるように根本的に変えたいのであれば、果敢な行動が必要である。

出典:Michael Mazza,‘Bolstering Alliances Against North Korea’(Wall Street Journal, August 30, 2017)
https://www.wsj.com/articles/bolstering-alliances-against-north-korea-1504109458


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