「すべてを力に」ネガティブな感情はバネになる
「弱虫で、いじめられっ子で、強くなりたくて柔道を始めてからは全身怪我だらけになって、頑張れば頑張るほど怪我をするという悪循環。そのうえ人に言えないような挫折や失敗を経験している。とにかく劣等感の塊で、ジェラシーの塊だった。そんなネガティブな感情や言葉を人に向けてしまうと刃になってしまうけれど、自分に向ければ力になる。僕はそういったネガティブな感情を、『俺だって、いつか必ずできる』と前に進む原動力に変えて生きてきました。夢に向かって背中を押してくれたのは、そんなネガティブな感情でした」
元総合格闘家大山峻護(おおやま しゅんご)は茨城県の少年院「水府学院」のアスリート講座で約30人の少年を前に自身の壮絶な半生を語った。
それは世界の強豪と対戦した栄光や実績というよりも、ひとりの人間が孤独感や劣等感を抱え、周りを羨みながら、いかに自分を輝かせることができるだろうか、自分らしく生きられるだろうかと苦しみもがき抜いた少年期の葛藤や、プロ格闘家時代の網膜剥離による失明の恐怖や大怪我からの復帰など、テレビではうかがい知ることのできない生々しい内容だった。
格闘技ファンにはお馴染みの『PRIDE』や『HERO'S』で、ヴァンダレイ・シウバ、ヘンゾ・グレーシーやハイアン・グレーシー、ミルコ・クロコップ、ピーター・アーツなど、世界の強豪選手たちとの対戦の裏側に隠された試合前の恐怖感や孤独感、試合後の敗北感や挫折感を吐き出した。
そして、辛かったことや苦しかったこと、失敗したこと、そんなものを多く持っている人間の方が大きな可能性と力を持っていると伝えた。
必ずできる!と信じる「勘違いする力」が道を拓く
「俺なんてぜんぜんダメな人間だから、俺にはできないと思うことも、俺には絶対にできると思うこともどちらも正解です。だけど、絶対にできると思っている人間には無限の可能性があります。世の中で成功している人や突き抜けている人たちは、自分にはできると信じている人たちであって、わかりやすく言い換えれば『勘違いする力』です。できると信じてやり続けてきたからこそ、成功を収めることができているんです」
イチロー選手をはじめ世界で戦うトップアスリートの例をあげて、彼らは小学生の頃から作文に将来の自分、活躍している自分について書いていたことを伝えた。
大山自身、両目の網膜剥離をはじめ、膝の靭帯断裂による変形、両手首や肘、肋の骨折、肩の脱臼癖、ヘルニアなど、その他書ききれないほどの怪我を負いながらも、「必ずできる」という勘違い力を発揮して夢のリングに立ち続けた経験を持っている。ゆえに「俺なんて」とか「俺にはできない」と自分を否定せず、自信をもって「俺はできる。必ずできる」と勘違いして前に進めと語れる。
そして敗戦や怪我、挫折、誹謗中傷など、過去のネガティブな思いはいつか感謝に変わると自信を持って彼らに伝えられる。