2015年12月2日茨城県の少年院「水府学院」で「ライフセービング講座~命のバトン」が行われた。同講座は2011年に始まり今回で5回目を迎えた。
講師は日本のライフセービング界をけん引する植木将人氏と北矢宗志氏に加え、地元茨城県の流通経済大学ライフセービング部から各学年の男女精鋭18名が心肺蘇生法の実技講師として参加した。
また、今回は『ルポ・少年院の子どもたち』7月22日掲載の「タグラグビー交流マッチ 本気で少年を更生させようとする大人たちが参加する社会教育」で紹介した水戸市内ロータリークラブの企業経営者たちが見学に訪れた。
ライフセービングを構成する5つの活動とは
ライフセービングとは、水辺の事故をなくすことを目的としており、溺水事故防止のための監視や指導、救助、ライフセーバーの技術力向上のための競技等を含めた活動をいう。社会奉仕と博愛の精神に基づき、救命、スポーツ、教育、福祉、環境という5つの分野における活動で構成されている。
第一の「救命」とは、水辺の安全を守る活動で、夏場の浜辺で赤と黄色のユニフォームを着たライフセーバーたちを見かけるはずだ。溺水事故ゼロを目指して、夏の2カ月のために残りの10カ月間を鍛えぬいている。
おぼれた人を救助にいったライフセーバーが命を落とすこともあり、また、荒れた海に一人で救助にいかなくてはならない状況もあるという。人の命を救う前に自分の命を守る力を養わなければならない。鍛えられたライフセーバーの身体には、日ごろのトレーニングの過酷さが刻まれている。
第二の「スポーツ」活動とは、実際の事故現場で人の命を救うための技術力や身体能力を高めるために、ライフセービング競技を通して、仲間と競い合いながら、救助力を高めようというものである。
ライフセーバーの技術力や体力が向上するということは、事故が起こったときの救命率の向上に繋がる。ライフセービングには「勝利の先に救う生命がある」「競技のナンバー1は、レスキューのナンバー1だ」という言葉があるように、彼らが目指すものは競技上での勝利ではなく、あくまでも溺水事故ゼロということなのである。
続いて「教育」活動とは、主に命の大切さや、安全に配慮し、自分の身は自分で守ることを学ぶ「ウォーターセーフティー講習会」や一般市民における心肺蘇生の普及を目指した「BLS(CPR+AED)講習会」などがある。
「福祉」活動では、障害のある人でも海を楽しめるよう水陸両用の車椅子を貸し出す地域があったり、障害者のスポーツイベントのサポートを行っている。また「環境」活動では、海が安全で美しく楽しい場所であるよう、ゴミや空き缶、ガラス瓶などを拾うビーチクリーンに取り組んでいる。
ライフセーバーはこうした5つの活動を行いながら、水辺の事故ゼロを目指している。