院生も“私たちと何も変わらない人たち”である
その院生たちと初めて接した大学生部員たちはどんな感想を抱いたのだろうか。
「様々な背景を持っている院生たちに、自分たちが日々取り組んでいる『命の大切さ』や『命を守る』ことの尊さを伝える良い機会になったと思います。ですが、みな真剣に取り組んでくれたので、実技のところではもっと伝えるべきことがあったのではないかと思います。院生たちの表情から逆に刺激を受けてしまったように感じました」
と男子部員は語り、女子部員はこう続けた。
「ここに来るまでは少年院がどんな施設で、どんな子たちがいるのか、まったく想像ができなくて不安でした。でも、実際に接してみると、彼らが話を聞いている態度や胸骨圧迫をしている姿からは、私たちと何も変わらない人たちなのだと感じました。
過ちを犯してしまったかもしれないけれど、真剣に取り組む姿を見て、良いか悪いか、という単純なものの見方だけでは収まらないものを感じましたし、もっと違った接し方ができたのではないだろうかと考えさせられてしまいました。
今日の学びを生かして、共に成長していけるようになれれば嬉しいです」
北矢は講座修了にあたって、出院するときは、ぜひこの「ライフセービングサポーター修了証」を持って行ってほしいと院生分の修了証を教官に託した。
少年犯罪は減少傾向にも関わらず増える再犯率
平成26年の犯罪白書によれば、平成26年中における刑法犯少年の検挙人員は4万8,361人で、平成16年から11年連続で減少し、人口比でも平成22年から5年連続で減少している。
その中で平成26年の再犯者数は1万6,888人で、前年より2,457人(12.7%)減少したが、再犯者率は34.9%と、平成10年から17年連続で上昇しており、統計のある昭和47年以降最も高い値となった。
数値上少年犯罪が減少しているといっても、各種報道によって事件がクローズアップされるために体感治安は悪化の傾向にあるようだ。それを加速させる理由のひとつが犯罪の低年齢化にあると考えられる。
平成26年中の初犯者数は3万1,473で、前年より5,651人(15.2%)減少した。それを年齢別に見ると、平成18年までは16歳が最多であったが、平成19年には15歳、平成20年からは14歳が連続して最多となっている。そこに触法少年(刑罰法令にふれる行為をした14歳未満の少年のこと)を含めると、平成20年以降は、13歳以下の初犯者数が14歳を上回っているというから、低年齢化は着実に進んでいる。先の再犯者率に鑑みれば、深刻な問題だと言わざるを得ない。
政府は「世界一安全な国、日本」を復活させるには、刑務所や少年院を出た人が犯罪を繰り返さないようにすること、すなわち、再犯の防止が極めて重要であるとして、「再犯防止に向けた総合対策(http://www.moj.go.jp/hisho/seisakuhyouka/hisho04_00005.html)」をとっている。
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