もちろん、最初は当然混乱する。各仕事場には大人がいて、大枠の仕組みの説明などはしてくれるものの、いったん動き出したら、よほどのトラブルがなければ基本的には口出しをしない。初日は125人の子どもたちが訪れ、工房で「自分が」作りたいものをどんどん作ってしまい、その商品を仕入れるデパートでは誰も買ってくれず、借金が膨らんでいくという悲惨な状況だったという。2日目にはしごと時間を変更したり、リーダーという役割を作ったりしたことでだいぶ秩序立ってきたそうだ。
「子どもたちは仕入れ値に利益を乗せることをあまり理解できず、儲からないんです(笑)。儲けることに罪悪感があるのでしょうか。正しいおカネ教育の必要性を感じました」(さかたさん)
子どもの職業体験といえば「キッザニア」が有名だが、おそらく「リアル」さで言えばこちらのイベントが上だろう。参加した子どもの保護者から寄せられた感想に、「こどものまちに参加した我が子が、しごとのこと、税金のこと、おカネのことに興味をもったのか、世の中のことをコンパクトにまとめてある本を借りてきたり(中略)、いろんな人や場に触れ、子どもの新しい関心、世界が広がっていると感じました」とあった。次回は4月に2日間でミニバージョンが行なわれることが決まっている。
モチベーションは「自分がやっていて楽しい」から
「こどもDIY部」のような場所が近所にある子どもたちは幸せだと思う。何がさかたさんをそこまで突き動かすだろうか。
「自分がやっていて楽しいのが一番ですね。もちろん、子どもたちの居場所のためですが、自分が楽しくなければ続きません。面倒だと思わないか? もちろん大変ですよ。でも一歩踏み出してみると、新しい人ともどんどん知り合えて、世界が広がります」(さかたさん)
たとえば、「こどものまち」はさかたさんを含め事前準備は3名で行っており、当日は地域で募ったボランティアの方々にお願いし、運営していた。他にも、シュノーケリングは地域のお父さんを講師として招いた。「今後は、もっと専門家の方とも繋がっていきたい。子どもたちに『ホンモノ』を体験してもらいたい」(さかたさん)という。
家庭、学校以外の「第3の場所」の存在は子どもにとって非常に重要であろう。「気軽に立ち寄れる、楽しく遊べる場所」が貴重になった現代、「こどもDIY部」が地域に果たす役割の大きさを実感した。
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