2024年11月22日(金)

海野素央の Democracy, Unity And Human Rights

2017年12月11日

 トランプ大統領を応援するバノン氏が会長を務める極右サイト「ブライトバート・ニュース」のフリン氏起訴に対する反応もみてみましょう。「ブライトバート・ニュース」は、「あなたは、米議会がクリントン夫妻とロシアとの不適切な関係を捜査するべきであるというトランプ大統領の主張に賛成しますか」というアンケート調査をネット上で実施して、反クリントンの読者の士気を高めています。

 ロシアとの不適切な関係とは、クリントン氏が国務長官時代に、米国のウラン採掘権を所有しているカナダ企業の買収をロシア国営企業に許可し、その見返りにクリントン財団が献金を受けたという「ウラン合意」を指しています。このアンケート調査の意図は、ロシア疑惑のみならず、ウラン合意に関しても特別検察官を設置させることです。

ゲーム・チェンジャー

 トランプ大統領は、上院で税制改革法案を可決させましたが、フリン氏起訴のニュースの影に隠れてしまい、満足のいくアピールができませんでした。そこで、6カ月間先送りができたのにも関わらず、同大統領はこのタイミングで、「公式にエルサレムをイスラエルの首都に承認する」と発表したのです。

 2016年米大統領選挙においてエルサレム首都移転を訴えたトランプ大統領は、ホワイトハウスでの演説の中で、「歴代の大統領は、主要な選挙公約として掲げてきたが、約束を果たすことができなかった。私は、今日約束を果たす」と強調しました。選挙公約遂行を持ち出して、国内の親イスラエル支持者の票固めを狙ったことは間違いありません。ホワイトハウスのホームページに掲載されたトランプ大統領のこの演説の視聴回数は、5万8000回に上りました。同大統領の思惑通り、エルサレム首都移転はロシア疑惑よりも注目を浴びたのです。

 ただし、それは一時的であり、エルサレム首都移転の発表は、ロシア疑惑から国民の目を逸らし、難局を乗り切る「ゲーム・チェンジャー(不利な形勢を覆す切札)」には成り得ないでしょう。今後フリン氏に続き、仮にクシュナー氏及びジュニア氏までが起訴されると、トランプ大統領はゲーム・チェンジャーに最も成り得る「北朝鮮のカード」を切る可能性が高くなります。日本は、北朝鮮問題とロシア疑惑を結びつけて注視していく必要があるということです。

  

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