今回のテーマは「フリン氏起訴」です。先月、ホワイトハウスのサーラ・ハッカビー・サンダース報道官は、定例記者会見でロシア疑惑に関して「まもなく終わるだろう」と楽観的なコメントをしました。
しかし、ロシア疑惑の捜査は拡大の一途をたどっています。12月1日、マイケル・フリン元大統領補佐官(国家安全保障問題担当)が起訴されたことにより、ロバート・モラー特別検察官の捜査の焦点は、ドナルト・トランプ大統領の娘婿ジャレッド・クシュナー大統領上級顧問及びドナルド・トランプ・ジュニア氏に移りました。捜査が、本格的にトランプ大統領の身内に入ったわけです。
本稿では、フリン氏起訴により何が明らかになったのかを整理し、そのうえでトランプ大統領のロシア疑惑に対する対処法を中心に語ります。
司法妨害
ロシア疑惑はフリン氏起訴によって、新たな局面を迎えました。疑惑の核心が見えてきたのです。
第1に、トランプ大統領による司法妨害の可能性が出てきたことです。モラー特別検察官のチームと並行してロシア疑惑の捜査を行っている上院司法委員会ダイアン・ファインスタイン筆頭委員(民主党・カリフォルニア州)、上院情報特別委員会マーク・ワーナー副委員長(民主党・バージニア州)及び下院情報特別委員会アダム・シフ筆頭委員(民主党・カリフォルニア州)は、トランプ大統領が自身のツイッターに投稿した「フリン将軍は、副大統領とFBIに虚偽の説明をしたので、解任せざるを得なかった」という書き込みに注目しています。
というのはこの投稿を額面通りに解釈すれば、フリン氏が虚偽供述をしたのを承知していたうえで、トランプ大統領はジェームズ・コミー米連邦捜査局(FBI)長官(当時)に、同氏の捜査打ちきりを要請していたことになるからです。仮にそうであるならば、司法妨害に当たる可能性が高くなります。
トランプ大統領の弁護士は、上のツイッターの投稿について「自分が誤って書き込んだ」と説明して、同大統領を守る姿勢を見せましたが、司法妨害の可能性は排除できていません。このツイッターの書き込みがロシア疑惑解明の糸口になれば、将来、「墓穴を掘った投稿」と呼ばれるでしょう。
政策の共謀
第2に、政策の共謀が見えてきたことです。ロシア疑惑では、選挙期間中におけるトランプ陣営とロシア政府による共謀に焦点が当たっていますが、確たる証拠が出ていません。
ところが、バラク・オバマ大統領が任期中、フリン氏がセルゲイ・キスリャク駐米ロシア大使(当時)と連絡をとり、イスラエルのパレスチナ占領地へのユダヤ人入植活動を非難する国連安全保障理事会の決議案に、ロシアが投票の延期ないし反対をするように働きかけていたことが明らかになりました。さらに、フリン氏は2016年米大統領選挙に介入をした報復措置としてオバマ政権がロシアに課した制裁に対して、同大使に応酬することを控えるように要請していたことも明確になりました。フリン氏は、ロシアと共謀してオバマ政権の政策を弱体化させる行動をとっていたと言えます。
組織ぐるみ
第3に、トランプ陣営による組織ぐるみの可能性です。ホワイトハウスは、フリン氏がキスリャク駐米ロシア大使と接触し
しかし、フリン氏はトランプ陣営の上級スタッフから指示を受け報告を行っていたことが、訴追資料から明らかになりました。米メディアは、上級スタッフとはクシュナー氏であると報じています。
それに加えて、一部の米メディアは、ショーン・スパイサー元報道官、スティーブン・バノン元首席戦略官兼大統領上級顧問及びラインス・プリーバス元大統領首席補佐官も、フリン氏がキスリャク駐米ロシア大使と接触を図っていた事実を承知したいたのではないかと、関与拡大の報道をしています。フリン氏の単独行動ではなく、組織的関与があった可能性が出てきました。
トランプと応援団の対処法
フリン氏が起訴されると、トランプ大統領はツイッターを通じてヒラリー・クリントン元国務長官及びFBIの批判を再開しました。同大統領は、「クリントンはFBIに何回も嘘をついたのに、何もなかった。フリンは嘘をついて、人生がメチャメチャになった」と自身のツイッターに投稿し、モラー特別検察官による捜査は2重基準であり、「非常に不公平だ」と訴えたのです。さらに、「FBIの評判はボロボロだ」とも書き込みました。
では、トランプ大統領の応援団であるFOXニュースの番組「ハニティ」は、フリン氏起訴にどのような反応を示しているのでしょうか。
「ハニティ」は、連日、トランプ大統領の援護射撃を行っています。司会者のショーン・ハニティ氏は、モラー特別検察官のチームメンバーの内、8名が民主党に対して献金を行ったと主張し、実名と献金額をリストアップしました。モラーチームは民主党寄りで不公平だと言いたいのです。
それに加えて、ハニティ氏は番組の中で「反トランプ・親クリントン」のメールを元メンバーと交換していた理由で解任されたモラー特別検察官のチームメンバーを取り上げました。
そのうで、モラーチームは、「腐敗していて、偏見があり政治的だ」と痛烈に批判したのです。その狙いは、モラー氏の信頼性を傷つけることです。