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2010年11月24日

 「SSBT OD05 OMNIBUS ACCOUNT CHINA TREATY CLIENTS」。常任代理人は香港上海銀行東京支店で、中国マネーをバックに持つと見られるこうした名前の投資家は、今や多くの日本企業の株主名簿に名を連ねる。それは次のような具合だ。三井住友フィナンシャルグループの1.28%を保有し、5位株主(10年3月末時点)。住友信託銀行株の1.32%を保有し、6位株主(同)。三井金属鉱業の1.15%を保有し、7位株主(同)。クラレの1.04%を保有し、10位株主(同)。エーザイの1.68%を保有し、8位株主(10年9月末時点)。

 これらはほんの一例に過ぎない。中国の国富ファンドであるCICは日本株にも投資している。分散投資を考えるのなら、製造業から金融業まで幅広く株式を保有するのは理にかなう。「企業買収の狙いはないだろう」と言いつつ、日本企業側の居心地が悪いのは、1%以上の株を保有しているにもかかわらず、本尊が中国と見られる投資家から何の接触もして来ないからだ。

 中国が黙って買ったのは株式ばかりでない。今年春から日本国債をまとめ買いし、1~7月の買越額が1兆7000億円にのぼった。ギリシャ危機を機に欧州の財政・金融不安が募っていた時期だったので、中国が外貨準備の一部を円にシフトしたとの見方が多い。もっとも中国は8月には今年に入って買った分はすべて売っている。

 「円高が進んだため、為替差益が出た分を売却し、利益を確定したのではないか」と市場関係者は見ている。それにしても、春先に中国が日本国債を購入したことは、「中国マネーの日本シフト」などと囃されて円高を促す要因になったのだから、日本にとってはいい迷惑である。「普通、外貨準備で他国の国債を購入する際には、事前に仁義を切るものだ」と、日本の財務省OBは不愉快さを隠さない。

日本にも伸びる触手

 中国マネーの動向で最も分かりにくいのは不動産投資である。「六本木や赤坂の高級マンションを中国マネーが買いあさっている」「銀座のビルの購入に動いた」といった話は、不動産関係者からよく聞くが、中国投資家の名前が表に出ることはまずない。米系やアジア系のファンドに資金を預け、ファンドの名前で購入していることが一般的だからだ。このやり方だと、日本側から警戒感を抱かれずにすむ。

 それにしても、都心の商業用ビルやマンションを購入しているうちはまだ良い。問題は日本の森林を買いあさる動きである。山の木を切り出すだけで、後の植林をせず、禿山を残すような振る舞いは論外だ。中国にはまともに飲める水がないから、飲料水を汲み出し持ち帰れば立派なビジネスになるが、日本の生態系の破壊につながらないか。日本の政府や自治体も、この点で手抜かりがあったというほかない。

 9月末時点で2兆6000億ドルもの外貨準備を持つ中国が、カネにモノを言わせて世界の資源や食糧を「爆食」し、企業や技術を買いまくる動きにブレーキをかけるのは無理な話だ。日本に彼らの投資資金が押し寄せるのも止められまい。問題は貴重な技術や資源に対する守りができていない点にある。安全保障にかかわる技術については、外国為替法の縛りがあるが、実際に問題になっているのは日本人が当たり前と思っている技術や資源なのだ。

 技術については、何が日本の強みなのか、官民挙げてトコトン話し合い、重要なものは外に出さない態勢を整えるべきだ。中国は単に日本企業を買収するばかりでなく、企業の中国進出に際し技術移転を強要している。一社一社の交渉では勝てないので、政府がバックアップしなければならない。もちろん、企業が円高で疲弊している現状を踏まえ、技術のある企業の生き残りを後押しすることも大切だ。

 市場を通じた株式や不動産の取得についても、官民が情報を共有できる態勢作りが欠かせない。いずれにせよ、現状の日本は中国マネーに対し、あまりにノーガードだ。気付いた時には外堀を埋められてしまっていたというのでは、話にならない。

◆WEDGE2010年12月号より

 

 

 

 

 

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