GHは、上空約1万8000メートルの非常に高い高度から、高性能のセンサーやレーダーで最大半径約550キロメートルの偵察・監視・情報収集ができる。航続時間は「約32時間以上」と有人機に比べて格段に長い。日本も導入を検討する時が来ている。
関連で、陸自の大胆な組織改編も今後の検討対象となりうるだろう。沖縄の米海兵隊普天間飛行場移設問題のゴタゴタをきっかけに、昨今、防衛省・自衛隊の内外で浮上しているのが「陸自の海兵隊化」構想だ。陸自の一部を軽武装にし、米海兵隊のように輸送用ヘリで即時に移動できるように改編し、災害支援や離島防衛などで即時展開を可能にしようとの構想だ。そのための輸送ヘリや輸送艦の増強は「集中」の対象となる。
最後に、武器輸出三原則の緩和については、アンテナなどに使う最先端の半導体素子や、航空機のジェットエンジンの部品など、日本が得意な高技術を駆使した「部品」や「素材」の輸出を可能にする。これにより、国際共同開発に参画できるようになり、大幅なコスト削減につながるばかりか、世界の先端技術へのアクセスが可能になり、日本の防衛産業の技術基盤の維持にも役立つ。
例えば、FX選定の候補となっている「F35」は、米国を中心に9カ国が共同開発。もう1つの候補の「ユーロファイター」は、英独など欧州4カ国が共同開発した。防衛省幹部は「共同開発の恩恵が最も大きいのは戦闘機。日本がすべてを単独開発するとしたら莫大なコストと時間がかかる。得意分野を選んで参加する『選択と集中』がベストだ」と話す。
基軸ない民主党政権 党のカラーより国益を
新しい発想や戦略的思考が必要な大綱作りだが、民主党政権の作業には、内容と段取りの両面で、すでに重大な懸念が生まれている。
1つは菅首相が「民主党カラー」の打ち出しに必要以上にこだわっていることだ。
8月27日、安保懇から報告書を手渡された首相は、「検討材料の一つとして取り扱う」と素っ気なかった。
半月後の9月14日。首相は、大綱策定のため、関係閣僚が出席する政府の安全保障会議を初めて開いた。再選をかけた民主党代表選を午後に控えた慌ただしい朝のことだ。関係者によると、首相はこの場で「まずは党の方で紙を作ってほしい」と指示したという。
ところが、その党側では、「外交・安全保障調査会」(中川正春会長)がようやく議論を始めたのが10月19日。調査会は、役員会約20人のメンバーが数回、政府側からヒヤリングを行ったが、「報告書は検討材料の一つ」であるため、党としてのたたき台を一から作っている。その理由は「安保懇の報告書は、武器輸出三原則の緩和をはじめ、党内の旧社会党系グループなどが受け入れにくい内容がある。より慎重にする必要がある」(調査会幹部)ことだという。
民主党は保守系から旧社会党系までの議員を抱え、これまで国政選挙の公約でも安保政策で統一方針を打ち出せなかった。今回の大綱策定は、民主党にとって、いわば長年の懸案にケリをつける難事業でもある。「党のカラー」を彩る余裕と時間があるのか疑問だ。
もう1つは、政府・与党の作業の進め方だ。
今回の大綱策定は、「勉強の期間を得るため」(北澤防衛相)、昨年末から1年延期された。しかし、今年2月の安保懇発足後、政府・与党内でそれに伴う検討作業が進んだ痕跡はない。