2024年6月16日(日)

Wedge REPORT

2010年11月30日

 渡邊教授は、「(活動を)続けることに意味がある。大切なのは継続性」と言う。「中学生との心の繋がりが大切なので、可能な限り中長期的に活動するよう学生たちには勧めている」と、その思いを語った。

 新宿区内の小中学校には、以前から教育実習の一環として、学生ボランティアが出入りしているという下地はあったのだが、これだけ多くの学生が活動するには、受け入れ側の体制を整えなければならない。当初の試行錯誤を経て、現在西新宿中学校では、大友副校長に加えて3人の先生が中心となり、生徒と学生の相性や先生・生徒のニーズ、学生の予定などを考慮して、どの学生に何の授業へ入ってもらうかをスケジューリングしている。

 また、ボランティアの下地があったとは言うものの、「授業に学生が入るということで、やはり教師の立場としては複雑な思いを抱いている先生もいた」(野口校長)という現実もあった。それでも、常に外部からの目があることで、先生たちも自分の授業に緊張感をもって取り組めるというメリットもあり、今では学生たちを「活用」して、良い授業をしようと努めている。

 学生たちも、「教えることはとても難しい」と、悩みながらここまでやってきた。ある男子学生は、「それまで築いてきた先生と生徒の関係に気づかずに、先生に対して物申してしまったことがあり、先生のプライドを傷つけてしまったと反省した」と失敗談を明かしてくれた。それでも、「この失敗を活かして、もっと積極的に先生方とコミュニケーションを図っていきたい」と前向きだ。

 他にも、給食の支給や休みの連絡方法、服装についてなど、当初は学校とボランティアの間で些細なすれ違いがいくつかあり、スムーズに活動できないことがあった。そこで、今では学生側にリーダーを設けて、団体をまとめるようにしている。リーダーを務める慶應義塾大学の河合紀明くんは、「リーダーという存在があることで、学校とのやりとりがスムーズになり、団体の存続性も高まった」と、その意義を見出している。

 この活動には、区の予算によって報酬が出されるが、交通費に充てられるかどうか…という程度の額。それでも学生たちがこの活動を続けているのは、お金では買えないやりがいがあるからだ。立教大学の鈴木悠子さんは、「勉強の楽しさを知ってもらうことが、生徒の自信につながり、学校に来るのが楽しくなってくれれば」と、そのやりがいを熱く語る。まだ活動に参加して2回目という同大学の中條俊樹くんも、「授業が終わった後でも、生徒に話しかけられるととても嬉しい」と、すっかり「先生」の顔だった。

課題は、人数の確保と継続性

 渡邊教授は、この活動を「国境なき学び舎(エコール・サン・フロンティエール、ESF)」と呼び、NPO法人化の手続きを進めている。それによって社会からの信頼や認知度が高まると考えているからだ。現在はその前段階として、学内でのサークル団体への申請中である。これまでのところ、渡邊教授が担当する講義の中でこの活動を紹介し、興味をもった学生が集まっているが、今後の安定的な人数の確保という点でも、「NPO法人化して、ホームページなどを作成し、広く学生を集めていきたい」と意気込みを語る。「これからは異文化共生の時代。『国内でできる国際貢献』を通じて、学生たち自身の成長の糧としてほしい」という、学生が活動を行う上で、渡邊教授の価値づけがあるからこそ、動機ややりがいなど、それぞれの思いは様々であっても、同じ方向を向いていられるのだろう。


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