2024年4月27日(土)

Wedge REPORT

2010年12月1日

 少なくとも、これまでの日本は、国際舞台を利用した韓国のプロパガンダに翻弄されてきました。例えば8月22日、韓国がオランダのハーグで「第16回、東海(*2)地名と海の名称に関する国際セミナー」(東海研究会、東北アジア歴史財団主催)を開催した際も、日本側は十分な反論をしていません。日本が反駁しない限り、国際世論は中韓ロに同調し、日本は領土問題でも発言権を失うかもしれません。日本海の呼称については、韓国が国連の地名標準化会議などで画策した結果、世界の35%が韓国側の主張する「東海/日本海」の併記を採用したと、韓国側は伝えています。

*2:韓国では独島が日本海にあると日本の領海内にあるようで不適切、日本海を韓国側の呼称である東海に改めるべきと主張。韓国側の主張に歴史的根拠がない事実は、すでに「WEDGE」2009年5月号「日本海が地図から消える? 韓国のでたらめ領土工作」で指摘。


──国際舞台で戦うために、日本はまず何を始めるべきでしょうか?

下條教授:まずは、メディアが正しい情報を流していくことが重要です。メディアが報道することによって政治家の関心が高まりますし、国民の関心も高まれば、世論が政治家を後押しする形ができます。それと同時に、国際社会に向けた情報発信を行っていくことです。韓国は、自国の主張を英文に翻訳してネット上で流し、「独島(竹島)は韓国の領土」という広告を、ニューヨークタイムズやワシントンポスト、タイムズスクエアの電光掲示板にまで出すなど、あらゆる手段を駆使して国際世論にアピールしています。また、シンポジウムを頻繁に主催しては、韓国側の主張に同調する各国の学者たちを招き、彼らを利用して自国の正当性を宣伝しているのです。

 日本も韓国のやり方を見習って、英文での情報発信やシンポジウムの開催など、対抗措置を講じていかなければなりません。ただ、そのためには、シンクタンクの存在が不可欠です。シンクタンクには、歴史、地理、国際法の専門家を集め、東アジアの歴史や地理をトータルに見ながら、今後どのような問題が起きてくるかを予測し、事前に対策が練れる体制を整えるべきです。日本の現状は、尖閣諸島、北方領土、竹島、それぞれ研究者が個々に研究を続けています。これらの研究者を一堂に集めて、日本の基本戦略を練っていくべきかと思います。

[特集] 尖閣諸島問題

※記事中の写真は、すべて下條教授による提供

下條正男氏(拓殖大学国際学部教授)
國學院大學大学院文学研究科博士後期課程修了。1983年、韓国の三星グループ会長秘書室勤務。1994年、市立仁川大学客員教授。1999年から拓殖大学国際開発研究所教授。著書に
『日韓歴史克服への道』(展転社)や『竹島は日韓どちらのものか』(文藝春秋)などがある。

 


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