中国のユニコーンの半数が所在
数字で中関村サイエンスパークの規模を押さえておきたい。2016年のデータで、入居するハイテク企業数は1万6000社強、総従業員数は280万人超、総売上額は74兆円超、ベンチャーキャピタル(VC)による投資総額は1.6兆円超で、全国のイノベーション投資総額に占める割合は実に24.7%に達している。
2017年の1~10月のデータだと、小規模企業を除いた中関村の企業の総収入は3兆7262億4000万元(64兆4000億)で、16年の同期比14.8%の増となっている。うち2割の1517社は30%以上の成長をしている。
中関村を代表する企業としてまず挙げられるのは、パソコン製造のレノボだろう。ほかにスマートフォン製造のシャオミ(小米)、検索エンジンのバイドゥ(百度)、動画共有サイトのYouku(ヨウク)、ECのJD.com(京東)などがある。
ベンチャーに関して言うと、ユニコーン企業(非上場で時価総額が10億ドル以上)が多いのも特徴だ。中国にあるユニコーン企業のうち、約半分が中関村にある。
中関村はその成り立ちからもわかるように、科学技術に強い。インターネット産業、IoT、ビッグデータ、フィンテック、医療、バイオテクノロジー、スマートカー(ITを搭載した自動車の総称)など、様々な分野で先進的な企業が存在する。こうした技術の生み出す収益の割合は高い。
2017年1~10月のエリア全体の技術収益は5568億元(9兆6000億円)で、前年同期比21.1%の伸び。総収入の14.9%を技術収益が占めている。科学技術系の企業数は右肩上がりで、17年の1~10月の間は、平均すると1日に78の企業が生まれている計算になるという。
以上みてきたようにその規模感には圧倒されるが、なぜ中関村はこれほどまでに右肩上がりを実現できる場所になっているのか。
「中関村がイノベーションを生み出している背景には、6つの要素と3つの環境があります」
こう話すのは、北京中関村駐東京駐在連絡事務所の王洪燕代表。6つの要素とは、①研究機関による技術支援②リーディングカンパニーの存在③イノベーションを起こす文化と政府のサポート④ベンチャー育成とコンサルティングの仕組み⑤エンジェル投資や後続の投資を得やすい環境⑥ハイレベルな人材と人的資源の豊富さ。3つの環境とは①市場環境②法的整備のされた環境③優遇政策のある環境――を指す。
「中関村には、これらの企業を早く成長させるための要素がそろっているのです」