私は、(私立)幼稚園が、もっと地域に開かれた幼稚園として、施設を開放すべきだと思います。市(町村)が困っているときに、その問題に対して理解を示し、手を差し伸べるのは、公的な援助をもらっている以上、幼稚園にとって当然ではないでしょうか。それだけでなく、諸外国の事例やこの少子化の状況を見れば、この先幼稚園経営が苦しくなることは避けられません。経営者としても、積極的に広い意味での子育て支援に取り組むべきだと考えました。
しかし、幼稚園経営者である以上、幼児教育の重要性は実感してきましたので、「認定こども園」という形を現在とっていません。認定こども園のシステムでは幼児教育の実施が今程充実しなかったり、運営に難しさを覚えたりするからです。現在横浜保育室を利用しているご家庭は0~2歳児であり、ここを修了した子どもたちは、全員3歳児から幼稚園に入る仕組みとなっています。この移行がスムーズなので、敢えて認定こども園に踏み切る必要性を感じませんでした。初音丘幼稚園は、幼稚園と保育園を一体化しなくとも、現行の枠組みでも解決できることを証明しているのです。
保育室をはじめて気づいたこと
保育室をはじめて気づいたことがあります。近年、幼稚園に入園してくる子どもたちの中で、おむつがとれていない子が増えていると感じていたのですが、同じ3歳児でも、横浜保育室に預けられていた子どもの方がおむつがとれている割合が高いのです。早期から子どもの自立を促すという点では、幼稚園よりも保育所が優れているという見方もできるのかもしれません。
つまり、幼稚園・保育所、それぞれ子どもにとって良いところと課題があり、互いがそれらを学び合い、子どもを育てる上でベストな環境づくりに努めていくことが大切だと思うのです。今回の幼保一体化に対するそれぞれの反応を見ていると、言い分としては分からなくはないけれども、もっと双方に努力の余地があるのでは、と感じます。互いに協力し合って、現行の枠組みで工夫していけば、トップダウンではなく、ボトムアップの「幼保一体化」が模索できるのではないでしょうか。
そういった点からも、私は、今の自分のやり方がベストだと考えています。幼稚園で預かり保育をし、できれば2歳児未満も含めた保育所を設置する。さらなる理想として、学童保育まで備えればまさに地域に開かれた教育施設(総合施設)です。現在、初音丘幼稚園には約400人の園児が通っていて、そのうちの4分の1の子どもたちが預かり保育を利用しています。横浜市内で預かり保育実施・第1号の園として、体制や教育内容にも満足してもらえているから、駅から徒歩30分以上かかるという立地条件の下で、市内でも比較的大規模な幼稚園に成長できたと自負しています。
大切なのは自治体との話し合い
幼稚園で預かり保育を成功させるためには、当然十分な人員と財源の確保が必須です。「横浜市は財源があるから…」ということを言われたりもしますが、それは違います。もっと、市内の私立幼稚園は、市(町村)と対話をして工夫することが必要です。初音丘幼稚園で13年前に預かり保育を始めるにあたって、市から園児一人あたり21000円の補助をもらうことができました(2010年12月時点では、園児一人あたり23800円の補助金が横浜市から支出されている)。こうした、自治体を説得して互いに協力し合う姿勢が重要と感じます。