収入差で家事分担を変えるべきではないという考え方
――村井さんが、本書で印象深かったのはどんなところですか?
村井:私がすごく衝撃を受けたのは、家族間の収入差で家事の分担率を変えるべきではないというところ。収入の額にかかわらず、家族全員の作業として家事を分担するという考え方が当たり前に出てくるのですが、日本では今までこういう考え方があったかなと。専業主婦が多かった時代は「あなたが稼いできてくださるから家の中は私が」だったかもしれないけれど、女性が外で働くようになって、そこのバランスがどう変わったのか。
――そういえば、知人女性が「夫が家事をしないって話をしたときに、男友達から『でも旦那さんの方が稼いでるんでしょ』って言われた」と怒っていました。実は彼女の方が夫より収入があったので、決めつけも含めていろいろとひどい。
村井:口に出さないけれどそう思っている人もいるでしょうし、口に出しちゃうぐらい無自覚な価値観をまだ持っているのかもしれないですね。こういう価値観が前提の中で、子どもを産みたいかってなると、正直産みたくないっていうのはすごくありますよね。女性にとっての出産、どの道に行っても厳しく見えてしまう。
――お金も時間も膨大にかかるわけで。
村井:それもそうだし、子どもはかわいいっていう夢のような部分しかクローズアップされないけれど、子どもって本当は全然かわいくないときもあるし、別の人間だから自分の思った通りになんか全然育たない。結婚して子どもを産んだら幸せ、お花畑の世界、というわけでは全くないです。
アメリカと日本のセックス観
――だからこそ、対策は必要ですね。最初にセックスレスの話が出ましたが、日本とアメリカで夫婦間のセックスに関する価値観はどんな違いがあるのでしょうか。
村井:アメリカは日本よりも、夫婦間のセックスは重要だと捉えられていると感じます。たとえば日本では「子どもが生まれてから8年間セックスレス」なんて話はよくありますが、アメリカの場合はあまりこういうことがない。1年間セックスレスが続くと、離婚の理由になってもおかしくない。だからアメリカの方が、真剣にセックスレスを克服しようとするのでしょうね。
――本書では、家族や子育てに関する非常に多種多様な調査結果が紹介されています。
村井:アメリカは家族研究をとても広くやっていると思いますね。たとえば、父親が育児に参加した場合、娘が自由な職業を選ぶ傾向にあるという調査結果が本書の中に出てきますが、日本でこういう調査はすごく少ない。
――日本でもやってほしいですね。
村井:アメリカと同じように多様な調査を行うには、規模の問題もあるので、なかなか難しいかもしれません。 ただ、ここで紹介されているような調査結果に、育児中の日本のお父さんお母さんがもう少し近づける環境があるといいですよね。手軽に海外の調査内容を読めるような場があれば。この本にしても分厚くて、育児中で時間のない方はなかなか手に取りづらいかもしれない。それでも有用な情報が少しでも届く場があればいいなと思いますね。
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