2月8日のペンス副大統領の米空軍横田基地における演説は、約20分に及ぶ大変力強いものでした。同じ場所で、3か月前にはトランプ米大統領が演説をしていますが、それを踏まえての今回の演説でした。
約20分のスピーチのうち、前半は米国軍の偉大さを鼓舞する内容で、後半は、主に北朝鮮を非難した朝鮮半島に関するものでした。
前半の米軍を讃える部分では、トランプ政権が、国防予算を大幅に増加したことを報告しています。それへの超党派の合意も得られていることで、米軍の兵士たちを喜ばせ安心させています。また、米国の核戦力見直し(NDR)が発表されて間もないこともあり、米国の核を近代化させて抑止力を高めるとも述べています。
後半では、北朝鮮の核・ミサイルの開発を非難するのは当然ですが、それ以上に北朝鮮国内の人権問題を挙げています。自国民への圧政や飢餓が蔓延していると言います。この論調は、昨年のトランプ大統領の国連演説や今年の一般教書演説の北朝鮮を非難するくだりでも同様です。北朝鮮の体制は「ならず者」だが、一般国民は犠牲者という論調です。実際、トランプ大統領は、一般教書演説の議場に脱北者を招きましたし、ペンス副大統領は、韓国訪問の際に、脱北者と面会しました。
今回、ペンス副大統領が、トランプ大統領の演説の後、3か月しか経ずに同じ横田基地で演説をしたのには特別の意味がありました。スピーチの最後の方で、ペンス副大統領は、朝鮮戦争に従軍した父親のことを述べました。父が、朝鮮半島で戦ったのは、自由を守るためだったと言います。全世界で戦っている米軍は自由と民主主義の擁護のためにいる、在日米軍も在韓米軍もそうである、と米国の建国の基礎を思い出させました。演説中、何度も「自由」という言葉が登場しました。そこには、核・ミサイルを放棄させるという以上の米国の理念、普遍的価値を感じ取ることができます。
今回の演説でも、日本を含むこの地域を呼ぶ際に、トランプ大統領が昨年ベトナムで行った演説以来の、「インド太平洋地域」という言葉が使用されました。北東アジアや東アジアにとどまらない、より広い地域を対象にした「インド太平洋地域」は、広大な海洋を想像させます。これは、安倍総理がかつてインドで表明した日米豪印を結ぶダイヤモンド構想とも呼応します。
日米同盟をますます強固にしながら、このインド太平洋地域で自由で開かれた国際秩序を維持して、平和と繁栄を享受していくためには、日本にも更なる努力が求められるでしょう。そのことをペンス副大統領の横田演説は具体的に示しています。
まず米国の国防予算の拡大がありましたが、日本も自国の国益を守るために、それ相応の防衛予算の拡大が必要になるでしょう。本年、安倍政権は、おそらく新たな国家安全保障戦略を打ち出し、国防戦略なり防衛大綱を見直すでしょう。その過程で、日米両国の共通戦略のすり合わせも行われるものと思われます。
また、対北朝鮮政策ですが、日米両国は、圧力を強化して北朝鮮の核実験やミサイル発射という挑発行為を止めさせ、核・ミサイル開発を放棄させることで一致しています。圧力強化と言いますと、トランプ政権が北朝鮮をすぐにでも軍事攻撃するような論調が一部にありますが、昨年の国連演説から今年の一般教書演説、そして上記の横田演説を読みますと、軍事オプションを含む全ての選択肢を考慮するが、まずは平和的解決を図り、経済的、外交的圧力を強化すると言っています。軍事=戦争、対話=平和というイメージで語られることが多いですが、実際は、平和的手段の中に、経済的、外交的圧力が入るわけです。
核・ミサイルも含め、日本は拉致問題の解決も含めた包括的解決を従来から主張しています。この拉致問題は、まさに人権問題であり、米国が主張する北朝鮮の人権問題と呼応する形で、解決を図っていくことがより効果的に思われます。今回、北朝鮮で拘束され帰国後に亡くなった米国人大学生のオットー・ワームビアさんの父親がペンス副大統領とともに韓国を訪問し、また両親・兄弟はトランプ大統領の一般教書演説の議場に招待されました。ワームビアさんのご家族を日本に招待し、拉致被害者のご家族と面談する機会が設けられれば、北朝鮮の人権問題でも日米連携がより深くなるのではないかと思われます。
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