ウォール・ストリート・ジャーナル紙が「トランプの南シナ海メッセージ;彼はアジア旅行でいくつかの重要な道標を立てた」との社説を11月16日付けで掲載、トランプの南シナ海問題での発言を評価しています。社説の要旨は次の通りです。
トランプ大統領のアジア旅行のテーマの一つ、南シナ海問題は、北朝鮮問題の陰であまり報道されていない。しかし、トランプは、ベトナムとフィリピンでは重要な道標を立てた。
ここ5年、中国は人工島に軍事基地を作り、緊張を高めてきた。昨年、国連の裁判所は、中国の主張が国際法に違反するとした。しかし、中国の船舶は、領土と経済的権利を主張する他の6か国の船舶への嫌がらせを続けている。
トランプはダナンでのAPEC会合のスピーチ(11月10日)で、領土拡張が地域の安定への脅威であると指摘し、「我々は法の支配、個人の権利、開かれた海路を含む航行と上空飛行の自由のような、我々すべてに利益をもたらしてきた原則を守らなければならない。これらの原則が安定を作り、信頼、安全保障、繁栄を諸国にもたらす」と述べた。
この発言は人工島に近づく船舶、航空機に退去警告している中国への直接の挑戦である。中国政府は米海軍が航行の自由作戦を行うたびに怒りの反応をしている。南シナ海は毎年推定4.5兆ドルの貿易が通過している。
米・ベトナム関係は温かいものになっている。7月、北京の脅しでベトナムはEEZでの石油探査をやめた。トランプはベトナムにパトリオット・ミサイル購入を進めたが、両国関係は戦略的パートナーに深化しうる。
フィリピンでは、トランプとドゥテルテは「国連海洋法条約に反映している国際法に従い南シナ海紛争を平和的に解決する重要性」を強調した共同声明を出した。ドゥテルテが昨年の判決を脇に置き、中国と石油・ガス探査で協力を申し出ていたから、これは意義深い。中国の行動が、ドゥテルテにフィリピンの権利を守るようにとの政治的圧力になっている。昨年、ドゥテルテは米軍がフィリピンから退去するように求めたが、今や両国は南シナ海に隣接するフィリピンの基地での米軍増強について話している。
11月13日、中国は東南アジア諸国と南シナ海での行動規範を作ることに合意したが、これは基地建設をやめることにならない。中国は今なお拘束力のない規範に固執している。
中国は1時間当たり6000立方メートルの砂を浚渫できる浚渫船を進水させ、ベトナムが領有を主張するパラセル諸島の埋め立てを進めている。
トランプは11月12日、ベトナム国家主席チャン・ダイ・クアンに、中国とベトナム及びその他の紛争当事国との仲介を申し出た。これは中国の反発をもたらしたが、東南アジア諸国は静かに歓迎している。今回トランプは、航行の自由を守り中国の領土拡張を抑止することは、米の死活的利益であるとの歓迎すべきメッセージを送った。
出典:‘Trump’s South China Sea Message’(Wall Street Journal, November 16, 2017)
https://www.wsj.com/articles/trumps-south-china-sea-messagetrumps-south-china-sea-message-1510791502