マックデヴィット元海軍少将(米CNA上席研究員)が、East Asia Forum のサイトに7月19日付けで掲載された論説にて、南シナ海についての米国の政策によって、中国は南沙諸島の完全掌握を先送りしたのは、平和的に実現し得る限りで最も良好な結果である、と論じています。要旨は次の通りです。
7年前のASEAN地域フォーラムにおいて、クリントン国務長官は明快に南シナ海の係争に介入したが、後から考えれば、それは米国が実際に何のテコも持たずに、中国の南シナ海における活動を制限しようとした試みであったと言える。米国は中国に規範に従うことや、島嶼の建造や軍事化を中断し、仲裁裁判所の判断に従うことを勧めてきた。
中国は米国の勧めを無視した。中国にとって、南シナ海は全てが中国の領域である。中国は長い期間をかけて主張を現実化させてきており、南沙諸島(スプラトリー諸島)の礁に軍事施設を建設したのは、その長期的な戦略目的を達成するための一歩である。中国の防衛のためにも南シナ海のコントロールは重要である。
7年経って、中国の南シナ海における行動を緩和させようとする米国の政策は目的を達成したと言えるか。今後はどうであろうか。
第一に、フィリピン政府が仲裁裁判所に中国の南シナ海における行動と主張について訴える決定をしたことに対して、米国は間接的ながら重要な支持を与えた。第二に、米国の利益は決して損なわれていない。第三に、フィリピンと米国の相互防衛条約は依然として有効であり、中国もそれに挑戦しようとしていない。フィリピンのドゥテルテ大統領は中国にも接近したが、依然として米比相互防衛条約を手放していない。
中国は決して南沙諸島の完全掌握を諦めていないが、少なくともそれは先送りになった。中国は南沙諸島における軍事バランスの恒常的な変化を望んでいるだろうが、他の領有権主張国と戦争することなくそれらを排除することは困難である。
米国の政策によって国際的な注目が南シナ海に集まることになり、世界中で中国の将来の行動に対する疑念と懸念が生じた。米国政府が実際にできることが極めて少ないことを考えれば、これは平和的に実現し得る限りで最も良好な結果ではないか。米中関係には多くの重要な問題があり、トランプ政権は南シナ海問題を適切に処理することが望まれる。
出典:Michael McDevitt,‘The South China Sea seven years on’(East Asia Forum, July 19, 2017)
http://www.eastasiaforum.org/2017/07/19/the-south-china-sea-seven-years-on/