2月中旬にハリス米太平洋軍司令官が、米下院軍事委員会で行った発言は、A4全58ページにのぼる長文のレポートとしてネット上でも読めるが、上記はそのうち中国について語ったほんの一部の紹介である。中国の軍事力拡大に関して、海軍力、空軍力、陸軍力の他、サイバー部隊や宇宙戦力に関しても簡単に触れられている。2020年、すなわち、東京オリンピックを迎えるほんの2年後には、中国が世界第2の海軍国家になるというのには、中国の軍拡の早さに驚かされる。中国と海で国境を接し、東シナ海問題を抱える日本にとっても他人事ではない。特に、尖閣諸島周辺では、年々、中国の公船が大型化、武装化して、数を増やしてやってきていると言う。
ハリス米太平洋軍司令官の分析は淡々として簡潔ながら鋭かった。中国の軍拡は止まらない。2018年3月5日、中国の第13期全国人民代表大会(全人代)が開幕したが、その中でも、中国の軍国化路線は鮮明に打ち出された。李克強首相が行った政府活動報告では、2018年度の国内総生産(GDP)の成長率目標は6.5%前後と示された。が、同日に公表された2018年度の予算案の中で、国防予算の増加率は、GDP成長率を上回る8.1%だった。総額にすると1兆1069億5100万元、日本円では約18兆4000億円にもなる。
ハリス太平洋軍司令官は、中国の軍拡は、一帯一路構想や米国内の不動産投資等経済分野とも関係していると述べた。3月5日の全人代では、そのことを中国が認めるように、李克強首相が、「海洋経済を大きく発展させ、国家の海洋権益を断固として守る。」と発言している(2018年3月6日付産経新聞)。海洋権益と言えば、南シナ海や東シナ海における中国の一方的主張や行動が思い出される。南シナ海では、領有権の争いのある海域に人工島を造設し、そこに軍事基地をつくっている。東シナ海でも、日本との合意を無視する形で一方的にガス田開発を行なったり、日本固有の領土である尖閣諸島に対して領有権を主張し始めたりしている。
日本としては、今後も、日米同盟を基軸に、インド太平洋地域の平和と繁栄のために、外交的にも軍事的にも、経済的にも、米国と密接に連携を取って行くことが重要だろう。経済的にも軍事的にも巨大化して世界中に出てきている中国に対しては、日本一国では太刀打ちできない。インドや豪州、欧州諸国も含めて仲間を増やして行くことが大事だろう。幸い、米国のトランプ政権では、安全保障上、インド太平洋地域を重要視して、安倍政権の掲げる日米印豪のダイヤモンド構想と共通の認識を持っている。また、欧州でも、最近の中国の動きを見ていて、対中脅威認識が高まってきている。例えば、2018年2月中旬に行われたミュンヘンの安全保障会議では、ドイツのガブリエル外相が、中国の一帯一路構想は自由か独裁かの選択を迫るものであり、西側諸国はこれに代わる構想を打ち出さなければならないと述べた。
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