一方、ポンペオはCIA長官として毎朝機密情報報告を自ら大統領に届け、二人で話をする時間が長かった。トランプとポンペオは、二人とも単刀直入、押しが強く、強引である。時がたつにしたがい、二人は意気投合し、イラン核合意への反対、テロ容疑者の尋問における「水責め」の容認、北朝鮮など政策に関しても意見が一致することが判明していった。対イラン政策など、機密情報ブリーフィングを通し、トランプはますますポンペオの考え方に影響を受けたとも見られている。
ポンペオの最大の強みはトランプの信任が厚いことである。トランプとポンペオの間では、トランプとティラーソンのような軋轢の可能性は低いと思われる。そういう意味では、米外交において、少なくとも内部対立を反映した一貫性の欠如はなくなるであろう。しかし、その一貫して追求される外交が国際的に問題を引き起こす可能性はさらに大きくなる危険がある。
今後のアメリカの米外交政策は、今回の更迭によりどういう影響を受け得るであろうか。まず基本となるのは、全てにおいてポンペオはティラーソンよりタカ派だということである。イラン核合意に関し、ティラーソンは擁護していたが、トランプは反対であった。ポンペオはトランプと同じ考えである。エルサレムの首都認定問題についても同様である。北朝鮮については、ティラーソンは、北朝鮮の政権交代は望まない、崩壊は望まない、38度線を越えて軍を送りつもりはない、とにかく顔を合わせてみよう、と外交を強調していた。これに対し、ポンペオは金正恩の暗殺を示唆したことがある。また「外交を通した非核化が不可能と判断した場合は、我々は大統領にあらゆるオプションを提供し、大統領が述べてきている目的を達成する」とも述べたこともある。トランプの考えがよりストレートに政策に反映されるようになるものと思われる。
ホワイトハウス、政権内では、グローバリスト、国際協調主義者と自国利益最優先の米国第一主義者の対立がある。この二つの潮流の勢力争いの中で、前者の勢いがなくなってきていると判断してよさそうである。鉄鋼アルミへの関税に反対し、前者に属するコーン経済担当補佐官も辞任した。トランプは3 月13 日、「自分の望む内閣になりつつある」と言っている。さらに、3月22日には、これも国際協調主義者に属するマクマスター安全保障担当補佐官が解任され、国際協調派の有力者は今やマティス国防長官だけという状況である。
マティスとティラーソンは協調関係を築いていたが、福音主義者であり、かつ共和党の茶会派に属するポンペオ新国務長官が、マティスと協調していけるかどうか、分からない。
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