2024年12月4日(水)

世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2018年4月3日

 トランプ大統領は3 月13 日、突然、ティラーソン国務長官を解任し、次期国務長官にポンペオCIA長官を指名した。突然ではあったが、予想されたことでもある。

 
 
 
 

 大統領と波長が合わなかったのは最初から明らかだったか、時がたつほどに二人の姿勢、イランや北朝鮮政策の違い、そして二人の関係の悪化が明らかになっていた。辞任、解任説は幾度となく流れた。昨年11月にトランプはティラーソンを解任しようとしたが、ケリー首席補佐官などに思いとどまらせられたという。北朝鮮との会談の可能性を前に、自分と意見も波長も合う人物に置き換えたというのが、解任の最大の理由であろう。

 一方、ティラーソンの国務長官としての能力は決して評価できるものではなかった。国務長官としてティラーソンは有能であったわけではない。国務省予算の削減には抵抗せず、国務省の士気を著しく低めたことは否定できない。また、重要ポストを空席にしたままに放置した。

 3月13日付けのワシントン・ポスト紙社説“Trump humiliates Rex Tillerson for the last time”は、「(ティラーソンは)公衆とのコミュニケーションの重要性を含め、外交の不可欠な要素を理解しなかった。彼は国務省のプロを無視し、不適切な再編成を行い、国務省をひどく損傷した。彼は人権を強調せず、米国の原則を無視したし、湾岸諸国のような同盟国やロシアのような敵対国との関係でも、交渉者として効果的ではなかった」と批判している。また、3月14日付けのフィナンシャル・タイムズ紙社説“Rex Tillerson’s abject exit from Foggy Bottom”も「ティラーソンは、イラン核合意、ロシア、貿易、地球温暖化についての見方は現実的だったが、酷い国務長官(terrible secretary of state)だった」と酷評、その根拠としてはワシントン・ポスト紙と同様のことを挙げている。

 ティラーソン解任を受け、国務省のスタッフは喜ぶと同時に不安を覚えている。今や、ティラーソンの国務長官としての能力不足の結果、国務省の士気は最低である。ポンペオが国務省の士気を高め、立て直すことが期待される。

 ティラーソンの意見が大統領のものではなかったのは明らかで、大統領、米国の政策の顔となることができず、他国はティラーソンの言葉を大統領の見解として受け入れることができなかった。それにより、米国の威信は低下の一途をたどった。


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