トランプ大統領は3月8日、鉄鋼とアルミに対して輸入関税を課す大統領布告に署名した。3月1日に計画を発表した段階では、例外なく鉄鋼に25%、アルミに10%の輸入関税を課すとしていたが、実際に署名された大統領令では、米国の重要な同盟国等には適用除外し得ると修正している。
トランプ政権は、今回の措置は国家安全保障上の必要性に基づくものであると理屈付けをしている。ホワイトハウスは、概要、以下の通り発表している。
経済安全保障は国家安全保障である。我々の鉄鋼・アルミ産業を不公正な貿易慣行から守ることは国家安全保障にとり重要である。
米国は世界最大の鉄鋼輸入国であり、輸入量は輸出量の4倍近くに達する。アルミについては、生産量の5倍に当たる量を輸入している。
アルミは、多目的装甲車(AMPV)、水陸両用強襲車(AAV)、ブラッドレー歩兵戦闘車(BFV)、AH-64アパッチ・ヘリコプター、V-22オスプレイを含む、さまざまな兵器に使われている。鉄鋼は、空母、揚陸艦、潜水艦、戦車、軽装甲車に必要である。
商務省の調査では、鉄鋼・アルミの輸入の現在の水準は、国家安全保障を潜在的に脅かし得る。国内の鉄鋼・アルミ工場の更なる閉鎖は、米国の国防産業の必要を満たすのに十分な生産を不可能にしかねない。
他国の過剰生産、不公正な貿易慣行、貿易政策が、米国の鉄鋼・アルミ産業を損ね、国家安全保障に脅威を与えている。
世界の鉄鋼の余剰は7億3700万トンに達し、中国のアルミの過剰生産は2016年には390万トンに達している。この問題への国際的取り組みは不十分だ。
米国の鉄鋼・アルミ生産の衰退は、米国の国家安全保障と経済にとり重要な産業の労働者の職を失わせている。
大統領は、不公正な貿易慣行と対決し、国家安全保障への脅威に対処する、と言ってきた。
大統領は、国家安全保障が最優先課題であり、自由貿易を支持するがそれは公正でなければならない、と繰り返し述べてきた。
これまで、トランプ政権は不公正な貿易慣行と戦い続けてきた。今年1月、トランプ大統領は、大型洗濯機とソーラーパネルへのセーフガード関税を承認した。2017年には、トランプ政権は82件のアンチダンピング措置と相殺関税についての調査を実施した。
米通商代表部は、中国による技術移転、不公平なライセンス供与、知的財産の窃取につき、調査を開始した。
出典:‘President Donald J. Trump will Protect American National Security from the Effects of Unfair Trade Practices’, White House, May 8, 2018)