また、通貨問題はある意味で誤解を招きやすい。というのも、中国で主に調達と生産を手がける大半の米国企業(および国際企業)はミスアラインメントの影響をあまり受けないかもしれないが、25~45%と推定(当てずっぽうに近い推測)される人民元の過小評価によって大きな痛手を被っている企業群が間違いなく米国に多数存在するからだ。
こうした企業は中小の鉄鋼・部品メーカー、専業メーカーに集中しているのだが、中国のライバル企業によって駆逐されつつある。
つまり、たとえ通貨問題のマクロ経済効果については議論の余地があるにせよ(実際、激しい議論が繰り広げられている)、人民元のミスアラインメントの幅や、それによって失われる米国の雇用について、ピーターソン国際経済研究所のフレッド・バーグステン所長のような著名な識者の推計を引用した記事が絶え間なく報じられることの政治的な累積効果は、米議会では誰一人として、人民元は中国が「フェアプレーをしていない」ことを示すもう1つの例だということに異論がないことを意味している。
このため、人民元は客観的な事実とはほぼ無関係に、数々の「不公正な取引慣行」を一層膨らませることになる。ここには、優れた米国企業さえ本来の力を発揮するのが極めて難しくなるような政府補助金などが含まれる。米国の議員は皆、通貨法案に賛成票を投じるまではいかないにせよ、この空気を肌で感じている。
そこで重要な問題は、一連の状況が積み重なって人民元問題を巡る情勢を大きく変え、キャンプ議員が考えを変えざるを得ないと感じ、「行動を起こす」という規範の下で対中制裁法案の提出を許すことになるのかどうか、という点になる。
中国の国際的な行動が
法案の是非を決めるだろう
今年第1四半期についての我々の判定は、その可能性は低い、というものだ。今夏はどうか? もしかしたら、あり得るかもしれない。では、秋はどうか? それは状況次第だ! そして、この最後の点が我々の書きたいことだ。
まず、間違ってはならないのが、米中貿易に携わる企業が提起する悲痛な問題や苦情、係争の長いリストについて、共和党議員は民主党議員と同じくらい腹を立てている。ただ、共和党議員というのは、法律によって経済情勢を変える有効性をあまり信じない傾向がある“種族”なのだ。
だが、下院歳入委員会の新委員長であるキャンプ議員が昨年、レビン議員の通貨法案を事実上、共同提案したということは覚えておいた方がいい。