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2011年3月1日

 詩から始まったシュルレアリスムを象徴する充実したキャプションがあちこちに展示されている。特にシュルレアリスムの特徴を記したものを南氏に解説して貰った。

「眼は野生の状態で存在する」

 「過去のレアリスム、印象派、キュビスムなどはいずれも外の世界のモデルを描写し、再現しています。ここではシュルレアリスムが描き出した様々な手法がテーマに分かれていて、「内的なモデル」はシュルレアリスム独自の自己の内側に宇宙を見出し、描く主題を探す姿が映し出されています。「甘美な死骸」はシュルレアリスト達の共同制作の成果です。個人では出てこないイメージが噴出します。つまり、個人から抜け出ることを目標としたのです。「偏執狂的=批判的」はダリの手法で、夢や半覚醒の世界を克明に描き出すことを主眼としています。それよって、社会的に機能するように個人のヴィジョンを客観視するのです。この社会性は「神話学」に至ります。仲間内だけではなく国や民族といった共同体が所有するイメージにまでテーマを膨らませていったのです」。

 そうか、ヴィクトル・ブローネルの《空気の威信》などは自画像に見えてくるし、ダリの《部分的幻覚:ピアノに出現したレーニンの6つの幻影》なんかは個人の夢とレーニンという当時の現実が混合しているし、フランシス・ピカビアの《仔牛の崇拝》にでてくる牛はピカソの《ゲルニカ》に登場する権威としての牛によく似ている。

 チラシに掲載されているブルトンの言葉、「眼は野生の状態で存在する」。テレビ、広告、インターネット…。私たちが普段見ていると思い込んでいるものも、眼を野生の状態にすれば、新たな「発見」があるのかも知れない。そのような「眼」を、この展覧会に行って獲得しよう!


シュルレアリスム展―パリ、ポンピドゥセンター所蔵作品による― 国立新美術館
2011年2月9日(水)~5月9日(月)→5月15日(日)まで会期延長
開館時間:10:00~18:00 ※金曜日は20:00まで、3月26日(土)は「六本木アートナイト2011」開催に伴い22:00まで(入場は閉館の30分前まで)
*ただし4 月6日(水)、7日(木)、8日(金)は17 時まで(入場は16 時30 分まで)
*金曜日の夜間開館(18 時~20 時)は当面行いません。
*開館時間等は変更になる場合があります。都度、公式ホームページ等でお知らせします。
休館日:火曜日休館(ただし5月3日、10日は開館)
観覧料金:1,500円(一般)、 1,200円(大学生)、 800円(高校生)
交通:東京メトロ千代田線乃木坂駅 青山霊園方面改札6出口(美術館直結)、都営大江戸線六本木駅7出口から徒歩約4分、東京メトロ日比谷線六本木駅4a出口から徒歩約5分
お問合せ:03-5777-8600(ハローダイヤル)
展覧会ホームページ:http://www.sur2011.jp/

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