2011年が幕を開けて以降、日本でクローズアップされた中国関連のニュースは、いずれも自虐的な話題だった。
一つは胡錦濤国家主席の訪米で、もう一つがGDP(国内総生産)で中国が日本を上回り、日本が世界第2位の経済大国の地位から転落したというものだ。
中国にGDPで抜かれたのは今年じゃない?
GDPに関していえば、中国の購買力平価――世界銀行は3倍程度としている――を考慮すれば単純に比較できるものではない。また、中国には統計に表れない巨大な地下経済――一説には200兆円規模にも達するという――が存在することを考えれば、そもそも今年「抜かれた」「抜かれない」といった話ではなく、少なくとも5、6年前には抜き去られていたと考えるべき話で、メディアが大騒ぎすること自体ナンセンスなのだ。
何よりGDPの額は、中国の国民の多くが感じる幸福度の指標にはなりえないことは中国人の多くが感じていて、中国の地元紙をめくればもう3、4年も前から「より正確に中国人の幸せを測るための基準」について、どんな方法が最も実態を表すのか、活発な議論が繰り返されてきているのだ。
この数年、「幸福指数」と題した書籍が出版されたり、ブータン国王が採用した国民幸福指数を中国にも導入すべきといった提案も出たが、結局のところ「中国で最もポピュラーな収入層にある人口帯の平均値と対前年比での伸び率」で測ることが適当であるとの意見が出てくるまで、この議論は白熱していったのである。
日本を逆転しても中国の反応は冷淡
議論の背景にあるのは、要するにGDPが伸びたと騒ぐほど人々は経済発展の恩恵に与かっていないという実情だ。
それ故、中国がGDPで日本を上回り世界第2位の経済大国になったと報じられても、中国人は概してこのニュースに冷淡で、伝えるメディアも抑制的だった。
実際、中国人とこのテーマで話をしても単純に“逆転”を喜ぶ声はほとんど聞かれないのである。
例えば、年に2回、両国のメディア関係者が集まって行う「日中ジャーナリスト会議」の場でも、これまで幾度もこのテーマが取り上げられたが、中国側の出席者のほとんどがこの数字を「過大評価」と位置付けるのだ。
事実、経済規模では日本を上回ったといっても、発展の段階で見ればまだまだ日本のたどった道を追いかけているのが、偽らざる中国の姿だ。